抄録
ナシとリンゴで開発された SSR マーカーを用いたビワの DNA 品種識別法を開発した.日本で栽培されている二倍体の主要ビワ 15 品種,三倍体 6 品種・系統および四倍体 3 系統の合計 24 品種・系統を遺伝的同定に供試した.ビワと同じバラ科ナシ亜科に属するナシとリンゴで開発された 88 種類の SSR マーカーを用いて SSR 解析を行ったところ,26 種類の SSR マーカーがビワの品種識別に利用可能であった.26 種類の SSR マーカーにより,合計 82 の対立遺伝子が得られた.SSR 解析により,‘富房’と‘4N 富房’以外のすべてのビワ品種・系統を識別することができた.さらに,得られた SSR 遺伝子型データから,‘大房’や‘瑞穂’を始めいくつかの品種において親子関係を確認することができた.いくつかの SSR 座は倍数体において 2 つもしくはそれ以上の対立遺伝子を増幅したことから,三倍体,四倍体ビワでも,SSR 遺伝子型を同定することができた.三倍体種子なし品種‘希房’では,その両親である‘4N 田中-1’(♀)と‘長崎早生’(♂)から SSR 対立遺伝子が矛盾なく伝わっていたことから,親子関係を確認することができた.また,クラスター分析により得られた樹形図では,日本の経済栽培品種と中国のビワが明確に分かれなかった.これは,中国から導入されたビワから日本の栽培ビワが形成されたという説と矛盾しなかった.