Journal of the Japanese Society for Horticultural Science
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原著論文
化学的突然変異原処理により誘発されたホウレンソウの低シュウ酸突然変異
村上 賢治枝元 政樹畑 直樹伊丹 良美桝田 正治
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2009 年 78 巻 2 号 p. 180-184

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抄録

ホウレンソウはシュウ酸を多く蓄積し,シュウ酸とカルシウムが反応することにより尿路結石の原因となるとされる.本研究では,化学変異原を用いた低シュウ酸突然変異系統の育成を行った.‘新日本’の自殖可能な雌性間性系統の種子に,エチルメタンサルフォネート(EMS)を 50 mM の濃度で 6 時間処理し,M1 株ごとに自殖 M2 種子を採種した.M2 集団において総シュウ酸(可溶性 + 不溶性)濃度を測定し,低シュウ酸の可能性がある 4 株を選抜し自殖させ後代検定を行った.その 4 株のうちの 3 株の自殖 M3 集団においては,シュウ酸濃度が 9 から 19 mg·g−1FW に分布し低シュウ酸株はみられなかったが,1 株の自殖 M3 集団において,8 株のうち 5 株がシュウ酸濃度 2 mg·g−1FW 以下と非常に低い値を示した.この 5 株の低シュウ酸株のうち 2 株の後代 M4 集団をそれぞれ,低シュウ酸株後代 I,低シュウ酸株後代 II とし,元の‘新日本’市販種子および雌性間性系統と比較した.その結果,低シュウ酸株後代 I,II とも,シュウ酸濃度は市販種子や雌性間性系統の 3~6 分の 1 と著しく低く,硝酸濃度には大きな差はみられなかった.葉数は元の市販種子系統と差が無かったが,葉が小さく,株当たりの重量はやや少なかった.また,葉が薄く柔らかかった.

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© 2009 園芸学会
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