本研究では，カンキツ栽培品種‘南風’タンゴールと Citropsis schweinfurthii 間の有性属間雑種における細胞遺伝学的知見を得るために，Chromomycin A3（CMA）核型分析と genomic in situ hybridization（GISH）を行った．その結果，C. schweinfurthii の CMA 核型構成が 14D + 4E と単純であったのに対し，‘南風’タンゴールの CMA 核型構成は 1A + 4C + 5D + 8Eと複雑であった．また，C. schweinfurthii を種子親とする雑種 2 個体の CMA 核型構成はともに 1A + 1C + 11D + 5E であり，これらの A 型と C 型染色体は‘南風’タンゴール由来のものと考えられた．さらに，その 1 個体について GISH-CMA 分析を行った結果，両親の染色体を明白に識別することができ，C. schweinfurthii 由来の雌性配偶子 7D + 2E と‘南風’タンゴール由来の雄性配偶子 1A + 1C + 4D + 3Eとの受精によることが明らかになった．この結果から，野生種である C. schweinfurthii は同型の CMA 核型が相同染色体として対合するのに対し，‘南風’タンゴールは，異型の CMA 核型染色体が対合することが示された．
