Journal of the Japanese Society for Horticultural Science
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原著論文
温帯域におけるピタヤ(Hylocereus undatus)の 内成分および酵素活性の周日変化の季節間差異
野村 啓一井出 舞芦田 拓也米本 仁巳
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ジャーナル オープンアクセス

2010 年 79 巻 2 号 p. 135-140

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抄録

温帯域で生育しているピタヤについて,有機酸と炭水化物含量およびホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼ(PEPC),リンゴ酸酵素(ME),リンゴ酸脱水素酵素(MDH)の各酵素活性の周日変化を,夏と冬で比較した.夏には,リンゴ酸,クエン酸,デンプン含量は典型的なデンプン利用型 CAM 植物の変動を示した.酵素活性も夏には周日性を示し,特に ME 活性はリンゴ酸の変動と一致した.冬のリンゴ酸含量も CAM 型の変化を示したが,蓄積量は夏の 1/2 程度であった.クエン酸は極めて低レベルでほぼ一定の値で推移した.冬の酵素活性は,一日を通じてほぼ一定の値で推移したが,PEPC 活性は夏の最小値とほぼ同じであったのに対し,ME 活性は夏の最大値と同程度であった.MDH 活性は夏の方が高かったが,明確な周日性は示さなかった.これらの結果は,ピタヤは夏には正常な光合成とそれに続く代謝を行っているが,冬にはリンゴ酸の蓄積量が減少し,その後の代謝産物も減少していることを示している.この原因は PEPC 活性と ME 活性の低下であると考えられる.既報の結果も踏まえて考察すると,これら酵素活性の低下には気温だけではなく,日長も寄与していると考えられた.

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© 2010 園芸学会
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