2010 年 79 巻 2 号 p. 161-167
アスパラガス立茎栽培において,異なる栽培地および栽培条件(露地栽培,ハウス栽培)におけるルチンおよび総ポリフェノール含量の変動ならびに光強度がルチン含量に及ぼす影響を調査した.その結果,立茎栽培において若茎中のルチンおよび総ポリフェノール含量は栽培地,栽培条件によらず春どり初期にもっとも高く,その後徐々に減少した.特に親茎繁茂後の減少が顕著であった.若茎抽出物の抗酸化活性は春どり初期に高く,夏秋どり期間には減少した.ルチン含量は春先を除いて露地栽培の方がハウス栽培よりも高い傾向を示した.遮光ネットおよび紫外線(UV)カットフィルムでトンネル栽培を行った場合,光強度が低いほどルチン含量は低かった.また,UV カットフィルム処理区では,光強度は無処理区とほとんど変わらなかったが,ルチン含量は低かった.これらの結果から,紫外線を含む光強度が若茎中のルチン含量に大きく影響することが明らかとなった.夏秋どり期間中の光環境の改善によるルチン含量向上を目的として,光反射素材の畦間処理および親茎のネット誘引の二通りの栽培方法が若茎中のルチン含量に及ぼす影響について検討した.その結果,うね上の光強度およびルチン含量の向上にはネット誘引処理が有効であることが明らかとなった.