2010 年 79 巻 2 号 p. 174-178
Arbuscular mycorrhizal fungus(AMF)が共生したイチゴ(Fragaria × ananassa Duch.,‘濃姫’)における萎黄病および炭疽病耐性並びに抗酸化機能変動について調査した.Split root system(根系を 2 分割して育苗)処理したイチゴに AMF(Glomus mosseae)を接種し,接種 10 週間後に萎黄病菌 (Fusarium oxysporum f. sp. fragariae) および炭疽病菌(Colletotrichum gloeosporioides)を接種した.病原菌接種 4 週間後,AMF 共生イチゴでは萎黄病および炭疽病耐性がみられ,萎黄病菌接種区では根系における誘導耐性が確認された.また,病原菌接種前後において,AMF 共生イチゴでは地上部・地下部乾物重が無接種区より大きく,植物体生長促進効果が確認された.一方,抗酸化機能変動については,病原菌接種前では処理区間に差はほとんどみられなかった.しかし,病原菌接種後の AMF 共生イチゴでは,superoxide dismutase 活性,1,1-diphenyl-2-picrylhydrazyl ラジカル消去能,総ポリフェノール含量,総アスコルビン酸含量が無接種区より増大する場合が多かった.これらのことから,AMF 共生イチゴでは萎黄病(誘導耐性を含む)および炭疽病耐性がみられ,抗酸化機能がそれらの耐病性に関連する可能性が示唆された.