Journal of the Japanese Society for Horticultural Science
Online ISSN : 1882-336X
Print ISSN : 1882-3351
ISSN-L : 1882-3351
原著論文
キンギョソウの副花冠の発達における形態的特徴とホメオティック遺伝子の役割
山口 博康仁木 智哉仁木 朋子西島 隆明
著者情報
ジャーナル オープンアクセス

2010 年 79 巻 2 号 p. 192-199

詳細
抄録

キンギョソウには,基部が雄ずいと融合した副花冠を形成する品種が存在する.本研究では,副花冠の発達における形態的特徴とホメオティック遺伝子の役割を解析した.副花冠の原基は,雄ずい原基のやや基部側に側生した.この発生位置から,副花冠は雄ずいの托葉に由来すると考えられた.発達の進んだ副花冠では,クラス A 遺伝子の SQUAMOSASQUA)ならびにクラス B 遺伝子の DEFICIENSDEF),GLOBOSAGLO)の発現が高く,クラス C 遺伝子の PLENAPLE)および FARINELLIFAR)の発現が非常に低かった.これに対して副花冠の原基では,SQUA の発現は検出されず,PLE の発現が非常に低かった.これらの結果から,発達の進んだ副花冠におけるホメオティック遺伝子の発現パターンはいわゆる花弁型であり,このパターンは副花冠の発達の過程で確立されることが明らかとなった.副花冠と基部で融合している雄ずいでは,DEFGLOPLEFAR が葯で発現していた.しかし,花糸ではこれらの遺伝子に加えて SQUA の発現も高かった.これらの結果から,葯,花糸,副花冠からなる器官の複合体において,ホメオティック遺伝子の発現パターンが,葯における雄ずい型から,花糸における中間型を経て副花冠における花弁型に移行していることが明らかとなった.葯,花糸,副花冠は,形態学的には同じ花輪(whorl)に属するにもかかわらず,このようなホメオティック遺伝子の発現パターンの勾配が存在しており,この勾配が,副花冠が観賞価値の高い花弁状の器官に発達するのに必須であると考えられた.

著者関連情報
© 2010 園芸学会
前の記事 次の記事
feedback
Top