Journal of the Japanese Society for Horticultural Science
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原著論文
渋皮剥皮性に優れるニホングリ‘ぽろたん’の渋皮に含まれるフェノール含量と日中クリ品種との比較
佐藤 明彦田中 敬一高田 教臣澤村 豊平林 利郎
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2010 年 79 巻 3 号 p. 258-262

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抄録
クリの渋皮剥皮性の難易は,フェノール物質の蓄積量によって決定され,渋皮剥皮性の悪いニホングリの渋皮にはフェノール物質が多く蓄積される.ニホングリでは落果により,渋皮内部に大量に蓄積されたフェノール物質が渋皮と胚の間にも大量に移動・蓄積され,そこで高分子化することにより,渋皮と胚の接着が完了する.本研究では,ニホングリであるにもかかわらず渋皮剥皮の良い‘ぽろたん’とニホングリ 2 品種,チュウゴクグリ 2 品種およびニホングリとチュウゴクグリの雑種と推定される 1 品種の渋皮に含まれるフェノール含量を定量・比較した.‘ぽろたん’の渋皮剥皮時間はニホングリ品種より有意に短かった.全フェノール含量はチュウゴクグリ品種で低く,‘ぽろたん’ではニホングリ品種と同様に高かった.一方,‘ぽろたん’の渋皮内側表面に蓄積したフェノール含量を示す水溶性画分のフェノール含量はチュウゴクグリと同様に低かった.また,渋皮内部に蓄積したフェノール含量を示すアルコール可溶性画分のフェノール量は‘ぽろたん’で極めて高く,それ以外の品種では水溶性画分とほぼ比例関係にあった.これらの結果から,‘ぽろたん’において渋皮で大量に蓄積したフェノール物質は,渋皮内側表面への移動量が少ないことが示唆され,そのため良渋皮剥皮性になると推定された.
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© 2010 園芸学会
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