抄録
カロテノイド生合成遺伝子の 1 つであるゼアキサンチン・エポキシダーゼ(ZEP)は,ゼアキサンチンをビオラキサンチンへの転換制御を通して,カンキツの成熟果実でのカロテノイド蓄積プロフィールに関与している.ZEP 遺伝子の発現レベルの制御機構の一端を明らかにするため,ヘテロ接合型カンキツを用いて ZEP 遺伝子のアリル特異的発現とアリル構造の関連を調査した.ウンシュウミカン‘BAC’ライブラリより 4 つの独立したゲノム配列を単離した.ウンシュウミカン由来のすべての ZEP 遺伝子はすべて 16 のエクソンと 15 のイントロンから成り立っていた.交雑集団を用いた配列多様性と遺伝解析によって,ZEP-1/-2 の 2 つの配列はアリルであり,ZEP-3/-4 は異なるローカスに存在することが明らかになった.ZEP-4 は幼果期のみに発現が検出され,果実成熟期で特に高い発現を示す ZEP-1/-2 遺伝子のアイソフォームであることが示された.このことから,ZEP-4 は成熟果実において,ビオラキサンチンの蓄積に関与しないことが示唆された.ヘテロ接合型のカンキツ果実において,発現レベルの割合はアリル特異的 RT-PCR を用いて予測したところ,ZEP-1 アリルは ZEP-2 アリルより高い転写量を示した.ZEP アリルの 5' UTR の配列の多様性を解析し,カンキツでの ZEP 遺伝子の発現の多様性と系統発生関係を考察した.