Journal of the Japanese Society for Horticultural Science
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原著論文
雌性型キュウリに対するエチレン阻害剤処理による機能的な両性花の誘導
山﨑 聖司真鍋 和人
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2011 年 80 巻 1 号 p. 66-75

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抄録
最も一般的なキュウリの性表現は同一個体上に雌花と雄花を分化する混性型であるが,普通の生育条件下で雌花のみを分化する雌性型も存在する.植物ホルモンの一つであるエチレンは,キュウリの性分化に影響を与えることが知られている.雌性型キュウリにエチレン生合成阻害剤である AVG を処理すると,雄花の出現のみが誘導されたが,エチレン作用阻害剤である硝酸銀を処理すると,雄花とともに両性花的な異常花の出現が促進された.硝酸銀処理で誘導された両性花的な異常花が機能的な両性花か否かを確かめるために,雌ずいと雄ずいの機能を解析した.その結果,25 個の両性花的な異常花のうち 8 個の花において,他家受粉により種子が形成され,かつ,スクロース培地上で花粉管が伸長した.これらの結果は,雌性型キュウリに硝酸銀を処理すると,両性花的な異常花のみならず,雌ずいと雄ずいの機能を合わせもつ機能的な両性花が誘導されることを示している.機能的な両性花では,雌ずいの長さは雌性型キュウリの雌花の雌ずいと同程度であり,また,雄ずいの長さは雄性両性同株型キュウリの雄花および両性花の雄ずいと同程度であった.一方で,硝酸銀処理で誘導された両性花的な異常花の集団では,雄ずいの長さが短くなるに従って雌ずいの長さは長くなった.これらの結果は,両性花的な異常花と機能的な両性花では,生殖器官の形態が異なることを示している.雌性型キュウリで出現した機能的な両性花は,硝酸銀が雄ずいの発育を抑制するエチレンシグナルのみを阻害した結果誘導されたものと考えられる.
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© 2011 園芸学会
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