Journal of the Japanese Society for Horticultural Science
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原著論文
フェニルアラニンアンモニアリアーゼ阻害剤によるユリ‘カサブランカ’の花の香りの発散制御
大久保 直美中山 真義市村 一雄
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2011 年 80 巻 2 号 p. 190-199

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抄録

オリエンタル・ハイブリットのユリの強い香りは,不快に感じられることがある.ユリ‘カサブランカ’を用いて,香気成分生合成阻害剤を用いた花の香りの発散制御効果について検討した.‘カサブランカ’の香気成分の解析結果から,イソオイゲノール,p-クレオソールなどの芳香族化合物が不快臭の原因の一つだと考えられた.芳香族化合物の生合成阻害剤として,フェニルアラニンアンモニアリアーゼ阻害剤であるアミノオキシ酢酸(AOA)と L-2-アミノオキシ-3-フェニルプロピオン酸(AOPP)水溶液を切り花の生け水として用いた.AOA,AOPP ともに香気成分抑制効果が得られたが,実用面からより安価な AOA を選択した.AOA の連続処理により,香気成分量が最も多くなる開花後 2,3 日目,花の老化が始まる 7 日目の花の香気成分量は,10–20%まで減少し,香りの強さも軽減された.同様の効果は,AOA の一時的な処理(24 時間処理)についても観察された.1.0 mM AOA 処理では花被に傷害が見られたが,0.1 mM では見られなかった.開花した花に対する処理の効果は,開花直前のつぼみに対する処理に比べて低かった.以上のことから,‘カサブランカ’の開花直前のつぼみに対する 0.1 mM AOA の連続処理は,観賞期間中の花の外観上の形態を損ねることなく,香気成分の発散量を減少させ香りを弱めることが明らかとなった.

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© 2011 園芸学会
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