Journal of the Japanese Society for Horticultural Science
Online ISSN : 1882-336X
Print ISSN : 1882-3351
ISSN-L : 1882-3351
80 巻, 2 号
選択された号の論文の13件中1~13を表示しています
総説
原著論文
  • 杉山 愛子, 大村 三男, 松本 光, 島田 武彦, 藤井 浩, 遠藤 朋子, 清水 徳朗, 根角 博久, 生駒 吉識
    2011 年80 巻2 号 p. 136-144
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/04/22
    ジャーナル オープンアクセス
    カンキツにおいてカロテノイドの高含有化は重要な育種目標である.そこで,カロテノイド蓄積に関する遺伝的情報を得るために,本研究では‘興津 46 号’と‘農 5 号’の交雑集団を用いて QTL(quantitative trait loci)解析を行った.51 個体の交雑系統において,総カロテノイド含量と個々のカロテノイドの含量が両親を超越した個体が出現した.Kruskal-Wallis 解析と interval mapping 解析を用いて,それぞれの有意値と LOD(logarithm (base 10) of odds)スコアを参照して,これら交雑系統での総カロテノイド含量と個々のカロテノイド含量の QTL を検出した.個々のカロテノイドについて検出された QTL のほとんどが連鎖地図上の異なる領域にマップされた.この中で,最も強い QTL を示したのは‘農 5 号’の第 6 連鎖群上に検出された QTL で LOD 3.4,因子寄与率 26.9%を示した.総カロテノイド含量の QTL として検出された領域の LOD スコアの多くが,個々のカロテノイド含量で検出された QTL の LOD スコアより低かった.総カロテノイド含量の QTL として検出されたのは,13 の領域で,このうち 1 つの QTL のみが LOD > 2.0 を示し,残りの 12 の QTL の LOD はそれ以下だった.しかし,総カロテノイド含量の QTL として検出された領域は,個々のカロテノイドで検出された QTL 領域と重複していた.総カロテノイド含量の QTL として検出されたマーカーについて,2 つの QTL マーカーを用いて総カロテノイド含量を分離すると,単一の QTL マーカーのみで総カロテノイド含量を分離した時と比較して,さらに有意(P < 0.001)に分離できた.この結果から,総カロテノイドの QTL について累積的な効果が認められた.本研究は,2003 年 12 月に採取された 51 個体の果実を使用しているが,QTL 解析を行うには果実数が少ないこと,単一の時期のみの結果であることから,今回得られた結果から言えることは限定的である.しかし,本来,成熟期の果実でのカロテノイドの高含有化を目指していることから,本結果は,果実の成熟期に増加するカロテノイドの蓄積に関して,多くの情報をもたらすことができ,さらに,高カロテノイド含量の後代を選抜するための DNA マーカーの作成が可能であることを示した.
  • 太田 智, 國賀 武, 西川 芙美恵, 山﨑 安津, 遠藤 朋子, 岩波 徹, 吉岡 照高
    2011 年80 巻2 号 p. 145-149
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/04/22
    ジャーナル オープンアクセス
    果樹や栄養繁殖性の植物では,健全な苗の配給をするためにウイルスやウイロイドのフリー化が行われている.カンキツでは,熱処理法と組み合わせた茎頂培養や簡易茎頂接ぎ木が行われているが,より簡単で効率の高い方法への改良が求められている.本研究では,抗ウイルス剤の使用をひとつの改良策と考え,Satsuma dwarf virus (SDV)に感染した温州ミカン(Citrus unshiu Marc. ‘Ueno-wase’)において 4 種類の抗ウイルス剤(ribavirin,foscarnet,zidovudine および enfuvirtide)の効果を評価した.実験の結果,foscarnet が熱処理法と組み合わせた簡易茎頂接ぎ木におけるフリー化において,無処理区と比較して有意に高い効果を示した.一方,他のカンキツウイルスで効果が指摘されていた ribavirin は,無処理区と比較して有意差はなかった.Foscarnet と ribavirin に,茎頂からの植物体再生に有害な作用はみられなかった.Ribavirin を SDV に対して利用するためには,処理方法や濃度の最適化が必要と考えられた.Foscarnet は,SDV に非常に高い効果を示したことから,他のウイルスに対する効果も期待された.また,これまで植物には試されてこなかったヒト用の抗ウイルス剤に,植物ウイルスにも効果のあるものが存在する可能性が示唆された.
  • 池上 礼子, 江口 菜, 赤木 剛士, 佐藤 明彦, 山田 昌彦, 神崎 真哉, 北島 宜, 米森 敬三
    2011 年80 巻2 号 p. 150-155
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/04/22
    ジャーナル オープンアクセス
    カキ品種は果実の脱渋性の違いにより,完全甘ガキ(PCNA),不完全甘ガキ(PVNA),不完全渋ガキ(PVA),完全渋ガキ(PCA)の 4 タイプに分類される.これらの 4 タイプのうち,樹上で安定して脱渋する PCNA が育種において最も重要である.日本の PCNA 品種の脱渋性は劣性形質であるが,中国の PCNA 品種である‘羅田甜柿’では優性であり,その形質を支配する CPCNA 遺伝子座は日本の PCNA 形質を支配する遺伝子座とは異なっている.中国タイプの PCNA 選抜のための分子マーカー開発する目的で,‘羅田甜柿’の F1 後代にバルク法を適用し amplified fragment length polymorphism(AFLP)分析を行った.384 のプライマーセットを分析し,優性の CPCNA 対立遺伝子に連鎖した 3 つの AFLP マーカー,EACT-MCCC-222(RO1),EGGC-MCTC-309(RO2),EGCC-MCGA-105(RO3)を得た.このうち,EGGC/MCTC-309(RO2)を sequence-characterized amplified region(SCAR)マーカー化した.F1 後代(n = 264)を用いた PCR 分析の結果,この SCAR マーカーの適合率は 94%であった.優性の CPCNA 対立遺伝子に強く連鎖した RO2 マーカーの多型は,調査した中国,韓国および日本の品種のなかで,中国の PCNA 品種である‘羅田甜柿’と‘天宝蓋’のみで検出された.これらの結果から,RO2 マーカーは CPCNA の形質をもつ新しい PCNA 品種の育種計画のための marker-assisted selection (MAS)に有効であることが示唆された.
  • 玉城 盛俊, 浦崎 直也, 砂川 喜信, 本村 恵二, 安谷屋 信一
    2011 年80 巻2 号 p. 156-163
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/04/22
    ジャーナル オープンアクセス
    パパイア‘Sunrise Solo’(両性品種)および‘Wonder Flare’(雌品種)の果実および種子生産性を改善する目的で,沖縄県の施設栽培条件下で,奇形花の発生率,果実および種子収量,花粉発芽能力および雌ずいの生殖機能に関する季節性を調査した.‘Sunrise Solo’における奇形花の発生率は,2 月~3 月(平均気温:14.6~16.8℃)および 12 月~1 月(16.9~18.1℃)には 10%以下であったが,7 月~10 月(25.6~30.5℃)には 42~66%に増加した.雌性不稔花率は,3 月~11 月(16.8~30.5℃)では 10%以下と低かったが,12 月~2 月(14.6~18.1℃)には 13~37%に増加した.果実および種子収量は,5 月(24.6℃)および 11 月(19.4℃)に受粉した小花で増加したが,1 月~3 月(14.6~18.1℃)および 7 月~9 月(28.2~30.5℃)に受粉した小花で減少した.4 月~6 月(22.2~27.2℃)および 10 月~11 月(19.4~25.6℃)における花粉発芽率は 52~87%で高く,花粉管長(208~272 μm)も長く伸長した.しかし,1 月~3 月(14.6~18.1℃)の低温期に花粉発芽率(5.1~32%)は低下し,花粉管長(63~134 μm)も短かった.また,7 月~9 月(28.2~30.5℃)の高温期に発芽花粉は観察されなかった.これら花粉発芽性の季節変動の結果は,温度制御条件下における花粉発芽率の結果とほぼ一致した.すなわち,温度制御条件下では,花粉発芽率は 20~25℃ で高く(72~80%),15℃ 以下および 30℃ 以上で低かった(0~56%).一方,‘Sunrise Solo’および‘Wonder Flare’の雌ずいは,低温(16.7℃)および高温期(29.5~30.5℃)でもその生殖機能を保持した.すなわち,高温期に野外栽培株から採取した花粉(発芽率:約 35%)または低温および高温期に氷点下温度で保存した花粉を用いて授粉することにより,果実および種子収量が向上した.以上の結果から,パパイアの果実および種子生産は,花粉発芽に不適な低温または高温期においても,保存花粉による授粉で,改善可能であることが示された.
  • 宋 陽, 葉 麗紅, Tuladhar Astha, 新居 直祐
    2011 年80 巻2 号 p. 164-168
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/04/22
    ジャーナル オープンアクセス
    ブドウの発根ならびに根の成長に伴う細胞構造の変化を調査した.スベリン化した休止状態の根の先端から新根が発生する時,根の先端が拡大し,それに伴ってスベリン化した根端表面が離脱した.根の発生初期では,頂端分裂組織において細胞核が観察でき,多くの細胞分裂像がみられるようになった.根の横断面における維管束の原基当たりの道管数が約 5 個に増加した段階で,内皮の放射方向の細胞壁にカスパリー線が点状として現れた.根の先端から 150 mm の部位の内皮は完全にスベリン化し,維管束の原基当たりの道管数も増加した.若い根において,外皮のカスパリー線は必ずしも確認できなかったが,外皮のスベリン化は内皮より早く観察された.根の齢が進むにつれて内皮と内鞘の間に裂け目が出現した.内皮が内鞘から離脱する前に,内鞘の細胞分裂が盛んとなり,スベリン化した内鞘の層数も増加した.
  • 渡部 泰希, 口石 なつき, 中島 寿亀, 岩井 純夫, 尾野 喜孝, 平舘 俊太郎, 藤井 義晴, 駒井 史訓
    2011 年80 巻2 号 p. 169-174
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/04/22
    ジャーナル オープンアクセス
    アスパラガスの地上部および地下部のアレロパシー活性を雌雄別に検出するために,雌性および雄性の被検定個体を用いて無菌的に生物検定を行った.無菌の擬葉を用いたサンドイッチ法でアレロパシー活性を検定したところ,擬葉の生重量が 30 mg を超えると検定植物の生長は大きく阻害された.同手法を用いて擬葉を雌雄別に検定した結果,アレロパシー活性には雌雄間差異が認められなかった.また,擬葉を成葉および枯葉から採取しても,それぞれの活性の程度と雌雄間に差は認められなかった.根系のアレロパシー活性を検出するために,雌性および雄性の再分化個体を用いてプラントボックス法による検定を行ったところ,検定植物の生長は著しく阻害された.雌雄性が明確な被検定植物を短期間で取得するために,試験管内で早期開花させた実生を活用して生物検定を行った.その結果,雌株および雄株に由来する再分化個体を用いた場合と同様のアレロパシー活性を検出した.以上のことから,アスパラガスの雌株と雄株のアレロパシー活性は同等であることが明らかとなり,さらに,検定植物と被検定植物の性表現を任意に選定することで,雌雄性によるアレロパシー活性の質的な影響を検定することが可能となった.今後は,この実験系を活用し,アスパラガスのアレロパシー物質を再現性よく単離・同定することが期待される.
  • 岸本 久太郎, 中山 真義, 八木 雅史, 小野崎 隆, 大久保 直美
    2011 年80 巻2 号 p. 175-181
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/04/22
    ジャーナル オープンアクセス
    現在栽培されている多くのカーネーション(Dianthus caryophyllus L.)品種では,芳香性が低下傾向にある.強い芳香や特徴的な芳香をもつ Dianthus 野生種は,非芳香性品種に香りを導入するための有望な遺伝資源であると考えられる.我々は,花き研究所に遺伝資源として保持されている Dianthus 野生種の中から,芳香性の 10 種と,それらとの比較のためにほぼ無香の 1 種を選び,嗅覚的評価に基づいて 4 つにグループ分けした.GC-MS を用いた解析の結果,Dianthus 野生種の花の香りは,主に芳香族化合物,テルペノイド,脂肪酸誘導体に属する 18 種類の化合物によって構成されていた.最も強い芳香をもつグループ 1 の甘い薬品臭は,芳香族化合物のサリチル酸メチルに由来した.グループ 2 の柑橘様の香りは,テルペノイドの β-オシメンや β-カリオフィレンに由来した.グループ 3 の青臭さは,脂肪酸誘導体の (Z)-3-ヘキセニルアセテートに由来した.ほぼ無香のグループ 4 では,香気成分がほとんど検出されなかった.これらの花における放出香気成分の組成と内生的な香気成分の組成は異なっており,蒸気圧が高く沸点の低い香気成分が効率的に放出される傾向が認められた.また,グループ 1 の D. hungaricus の主要な芳香族化合物は花弁の縁に分布し,グループ 2 の D. superbus の主要なテルペノイドやグループ 3 の D. sp. 2 の主要な脂肪酸誘導体は,花弁の基部や雄ずい・雌ずいに分布した.この結果は芳香性に寄与する花器官が,Dianthus 種によって異なることを示している.本研究において,嗅覚的に良い香りで,芳香性に対する寄与が大きいサリチル酸メチルや β-オシメンや β-カリオフィレンを豊富にもつグループ 1 やグループ 2 の Dianthus 野生種が,カーネーションの芳香性育種に重要な遺伝資源であることが示唆された.
  • 犬伏 加恵, 榊原 均, 小嶋 美紀子, 服部 裕美, 奥村 義秀, 二村 幹雄, 大石 一史
    2011 年80 巻2 号 p. 182-189
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/04/22
    ジャーナル オープンアクセス
    カーネーション萎縮叢生症は,芽が萎縮し叢生するという特徴的な症状を呈すことから,内生植物ホルモンの生合成または代謝異常が,発症プロセスに関わっていると考えられる.一方,根においては特徴的な症状は見られないが,根圏環境が発症に大きく影響していることが知られている.地下部と地上部の関係を調べるために,発症しやすい品種と発症しにくい品種を利用した接ぎ木試験を行った.発症しやすい品種を台木に用いると,穂木が発症しにくい品種であっても発症した.この結果は,本症の発症は地下部に重要な原因があり,地下部からの何らかのシグナルにより,地上部において萎縮して叢生する症状が現れることを示唆した.そのシグナル物質は,根において生じ,萎縮症状が現れる前の段階で変化があると推察し,シグナルの候補として内生植物ホルモンを定量した.しかし,今回測定した植物ホルモンは,根において変動が認められず,シグナル物質ではないと推測された.一方,芽の茎頂付近においては,未展開葉が萎縮し始めると同時に IAA 含有量が低下した.IAA 含有量が低下してもサイトカイニン含有量は低下しなかったため,サイトカイニン/IAA 比が増加した.これらの結果から,本症の特徴的な症状は,IAA の生合成異常と,サイトカイニンと IAA の不均衡に起因することが明らかとなった.
  • 大久保 直美, 中山 真義, 市村 一雄
    2011 年80 巻2 号 p. 190-199
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/04/22
    ジャーナル オープンアクセス
    オリエンタル・ハイブリットのユリの強い香りは,不快に感じられることがある.ユリ‘カサブランカ’を用いて,香気成分生合成阻害剤を用いた花の香りの発散制御効果について検討した.‘カサブランカ’の香気成分の解析結果から,イソオイゲノール,p-クレオソールなどの芳香族化合物が不快臭の原因の一つだと考えられた.芳香族化合物の生合成阻害剤として,フェニルアラニンアンモニアリアーゼ阻害剤であるアミノオキシ酢酸(AOA)と L-2-アミノオキシ-3-フェニルプロピオン酸(AOPP)水溶液を切り花の生け水として用いた.AOA,AOPP ともに香気成分抑制効果が得られたが,実用面からより安価な AOA を選択した.AOA の連続処理により,香気成分量が最も多くなる開花後 2,3 日目,花の老化が始まる 7 日目の花の香気成分量は,10–20%まで減少し,香りの強さも軽減された.同様の効果は,AOA の一時的な処理(24 時間処理)についても観察された.1.0 mM AOA 処理では花被に傷害が見られたが,0.1 mM では見られなかった.開花した花に対する処理の効果は,開花直前のつぼみに対する処理に比べて低かった.以上のことから,‘カサブランカ’の開花直前のつぼみに対する 0.1 mM AOA の連続処理は,観賞期間中の花の外観上の形態を損ねることなく,香気成分の発散量を減少させ香りを弱めることが明らかとなった.
  • 新居 加恵子, 河鰭 実之
    2011 年80 巻2 号 p. 200-205
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/04/22
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究では,フーリエ変換を用いてトルコギキョウの花弁湾曲や二次元形状を定量的に評価した.花弁の湾曲は,花弁を側面から見た花弁中央脈の背軸面に沿った曲線をトレースし,得られたカーブの輪郭をフーリエ係数に変換して,これらを主成分分析にかけた.花弁湾曲は,第 1 から第 3 主成分までで,全変動の 95%以上が説明された.第 1,2 主成分は,それぞれ花の開き,花弁中間部の内側へのカーブを評価していた.花弁形状は,第 1,2 主成分で表され,それぞれ,花弁の横幅,花弁の重心を評価していた.さらに,品種と育種系統を合わせた全 122 品種について,花弁湾曲と花弁形状を表すフーリエ係数を用いて,自己解析マップによるクラスタリングを行った.その結果,4 つの典型的なグループ,ボウル型,トールカップ型,トランペット型,ロート型が見出された.花弁湾曲の第 2 主成分は,花弁形状の第 1 主成分と高い相関があり,ボウル型とトールカップ型の花冠の花弁湾曲形成は,横幅の広い花弁と関連があることが示された.
  • Hang Nguyen Thi Thu, 宮島 郁夫, 嬉野 健次, 小林 伸雄, 倉重 祐二, 松井 利郎, 大久保 敬
    2011 年80 巻2 号 p. 206-213
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/04/22
    ジャーナル オープンアクセス
    ベトナムおよび日本に自生するタイワンヤマツツジの花弁から総計 14 のアントシアニンが検出された.日本産タイワンヤマツツジ集団の花弁内アントシアニン構成はベトナム産のそれよりも複雑であった.花弁内の個々のアントシアニン含有率は二つの主要なアントシアニンを除けばすべてきわめて少なかった.花弁内アントシアニン構成によりベトナム産および日本産タイワンヤマツツジ集団を区別することはできなかった.すべての系統にみられた二つの主要なアントシアニンをカラムクロマトグラフィーおよび高速液体クロマトグラフィーで単離・精製し,1H-NMR 分析,酸およびアルカリ加水分解処理により調査したところ,cyanidin 3-galactoside および cyanidin 3-arabinoside と同定された.これらのアントシアニンはサツキ,ヤマツツジ,キンモウツツジおよびケラマツツジなどの赤色花をもつ常緑性ツツジに広く含まれているものと思われた.
  • 寺本(稲福) さゆり, 諏訪 竜一, 福澤 康則, 川満 芳信
    2011 年80 巻2 号 p. 214-224
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/04/22
    ジャーナル オープンアクセス
    琉球列島ではシィクワーサー(Citrus depressa Hayata)をはじめとした在来品種が数百年以上栽培されている.カンキツ類は特有の香気や機能性成分が含まれることから,沖縄で栽培されている 10 品種を材料とし,未熟ならびに適熟果皮に含まれる香気成分を GC-MS 分析によって,また HPLC 分析によりシネフリンと 6 種類のポリメトキシフラボノイド類(PMFs:シネンセチン,ヘキサメトキシフラボン,ヘプタメトキシフラボン,ノビレチン,ナツダイダイン,タンゲレチン)について分析を実施した.沖縄在来品種は,それぞれの品種において特有の香気成分プロファイルを示し,‘カブチー’(C. keraji hort. ex Tanaka var. kabuchii)にはセスキテルペン炭化水素類が 3.90–5.17%,‘ケラジ’(C. keraji hort. ex Tanaka)にはエステル類が 12.15–19.10%,シィクワーサーの‘大宜味クガニー’には,γ-テルピネンが 21.17–29.60%,p-シメンが 6.49–9.84%含まれていた.シネフリンは,未熟果皮における‘トークニブ’(C. nobilis Lour.)で 8.97 mg・gDW−1 と最も高く,ついで‘イズミベニ’(C. tangerina hort. ex Tanaka)が 7.03 mg・gDW−1,‘大宜味クガニー’5.17 mg・gDW−1 の順であった.フラボイド類の PMFs は未熟果皮の‘大宜味クガニー’で 20.62 mg・gDW−1,‘カブチー’20.66 mg・gDW−1,‘オートー’(C. oto hort. ex Yu. Tanaka)12.52 mg・gDW−1,また主要栽培種のタンカン‘T-132’(C. tankan Hayata)にも 18.95 mg・gDW−1 含まれており,それぞれ固有のフラボノイドプロファイルを示した.これらの結果から,特に生産量の多いシィクワーサーとタンカンの加工残渣,摘果果実といった未利用廃棄物を有効利用できる可能性が示唆された.
feedback
Top