Journal of the Japanese Society for Horticultural Science
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原著論文
奄美諸島在来カンキツ遺伝資源のアイソザイムおよび DNA 分析
山本 雅史河野 留美子中川 剛志臼井 拓磨久保 達也冨永 茂人
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ジャーナル オープンアクセス

2011 年 80 巻 3 号 p. 268-275

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抄録
奄美諸島在来カンキツ遺伝資源の類縁関係について,アイソザイム,RAPD および葉緑体 DNA の CAPS 分析を実施して検討した.アイソザイムでは 3 種類の酵素の 4 遺伝子座を分析した.グルタミン酸オギザル酢酸トランスアミナーゼ(GOT)-1 では 4 種類の,GOT-2 では 3 種類の,パーオキシダーゼ(PX)では少なくとも 6 種類の遺伝子型が検出できた.スーパーオキシドディスムターゼ(SOD)では 1 系統を除き供試全系統が同一遺伝子型を示した.同一種および同種類の系統は同一の遺伝子型を示すことが多かったが,シィクワーサーにおける PX のように種および種類内での多様性も認められることもあった.RAPD 分析の結果から NJ 法で類縁関係を推定したところ,供試系統は A,B および C の 3 つのクラスターに大別できた.A クラスターには C. nobilis(クネンボ),C. keraji(‘ケラジ―喜界島’およびカブチー)並びに C. oto(オートー)が属した.B クラスターには対照種のみが属した.C クラスターはさらに 4 区分できた.すなわち,シィクワーサーサブクラスター,ダイダイ類縁種サブクラスター,‘キカイミカン―沖永良部島’および‘シマミカン’である.葉緑体 DNA 分析により供試系統は 3 種類に区分できた.タイプ I には C. nobilis(クネンボ),C. keraji(‘ケラジ―喜界島’およびカブチー),C. oto(オートー),‘ケラジ―加計呂麻島’,‘オート―沖永良部島’並びに C. rokugatsu が,タイプ II には C. depressa(シィクワーサー),‘キカイミカン―沖永良部島’,‘クサ’および‘シークー’が,タイプ III には‘シマミカン’のみが含まれた.RAPD 分析における A クラスターに属するすべてのマンダリンが葉緑体 DNA 分析においてタイプ I を示し,葉緑体 DNA 分析におけるタイプ II・III のマンダリンは RAPD 分析において C クラスターに属した.
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© 2011 園芸学会
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