ペチュニアにおける大輪形質と,花冠を拡大させる作用を持つサイトカイニンの生合成との関係を調べた.大輪品種(大輪化を誘導する
Grandiflora(
G)遺伝子に関して遺伝子型
Gg)では,中輪および小輪品種(遺伝子型
gg)に比較して,花冠の内生サイトカイニン濃度が,遊離型サイトカイニン(
N6-(Δ
2-isopentenyl)adenine(iP),
trans-Zeatin(tZ)),ヌクレオシド型サイトカイニン(iP riboside, tZ riboside),グルコシド型サイトカイニン(iP-7-glucoside)ともに低かった.花冠からは,サイトカイニン生合成酵素をコードするアデノシンフォスフェイトイソペンテニルトランスフェラーゼ遺伝子が 1 種類(
SHO),サイトカイニンリボシド 5'-モノフォスフェイトフォスフォリボヒドロラーゼ遺伝子が 1 種類(
PhLOG),サイトカイニン酸化酵素遺伝子が 2 種類(
PhCKX1,
PhCKX2)単離された.これらの遺伝子の小輪,中輪,大輪品種の花冠における発現を比較したところ,サイトカイニンの合成に関与する
PhLOG および
SHO の発現には品種間差異が認められなかったが,イソプレノイド側鎖を除去することでサイトカイニンを分解する
PhCKX1 および
PhCKX2 の発現は,小輪および中輪品種に比較して大輪品種で著しく高かった.以上の結果から,
Gg 遺伝子型を持つ大輪品種では,花冠が大輪化すると同時に,
PhCKX1,
PhCKX2 の発現促進によって内生サイトカイニン濃度が低下し,花冠の拡大が部分的に抑制されていることが示唆された.
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