抄録
トマトでは,果実肥大成長期に固形分のかなりの割合を蓄積する.この時期における水と同化産物の果実への流入バランスは,収穫時の固形分濃度を決定する重要な要因である.この研究では,急速な肥大成長期にある果実における師部液の糖濃度と果実固形分濃度との関係を調べた.第 1 果房の開花時に,第 1 果房直上の茎にヒートガードリング処理を行い,一方,第 2 果房より上の葉はすべて取り除くことにより,第 2 果房とその下の 3 枚の葉からなるソース・シンク単位とその他の植物体の部分との間の炭水化物の輸送を抑えた.この単離されたソース・シンク単位における果実あたりの葉数(葉果比)を,第 2 果房の着果確認後に様々に設定した.葉果比が 0.2 から 1 に増加すると,果実の乾物重は,葉果比に比例して 3.5 g から 7 g に直線的に増加した.しかし,葉果比が 1 を越えると果実乾物重はほぼ一定であった.一方,果実の乾物率と糖濃度は,葉果比 0.2~3 の範囲で,葉果比と正比例の関係にあった.EDTA 法の変法により測定した師部液の糖濃度も同様に,葉果比の増加にしたがって高まった.また,師部液糖濃度と乾物率および果実糖濃度との間に正の相関関係がみられた.これらの結果から,果実の糖濃度は,広い葉果比において師部液の糖濃度と比例して決定されると考えられた.