抄録
pat-2 遺伝子による単為結果性トマト‘京てまり’では,形成される種子数が非常に少ない.‘京てまり’における種子形成抑制の原因を解明するために,花粉管伸長および胚珠の形態の観察を行った.同じ pat-2 遺伝子による単為結果性トマト‘ルネッサンス’では,花柱基部で花粉管の伸長が阻害されていた.一方,‘京てまり’では花柱での花粉管伸長は正常であったが,胚珠への花粉管の進入が見られなかった.花粉管が進入していた胚珠の割合は,‘ルイ 60’で 70.4%,‘京てまり’で 0.8%,‘ルネッサンス’で 5.1%であった.‘京てまり’の胚珠の縦断面を観察したところ,珠孔付近の構造に異常がある胚珠が多数観察された.このような異常な胚珠は‘ルネッサンス’では観察されなかったことから,‘京てまり’に特有の因子が異常な胚珠の形成および種子形成の抑制を引き起こしていると考えられた.