抄録
栽培ギクでは,枝変わりの選抜や変異原処理により黄花系統の作出が試みられてきた.しかし,‘神馬’は花色変異が起こりにくい品種で,これまでに黄花系統は得られていなかった.大分県の圃場において枝変わりにより花弁が淡黄色に変異した‘神馬’を発見した(BS).これに重イオンビームを 2 回照射することで,黄色みが増した花色変異体(IB-1:1 回照射系統,IB-2:2 回照射系統)を獲得した.本報告では,これら‘神馬’の花色変異体の花弁におけるカロテノイド酸化開裂酵素遺伝子(CmCCD4a)の発現様式を解析し,カロテノイド蓄積量との関係を明らかにしようと試みた.花弁におけるカロテノイド量と CmCCD4a の発現量には負の相関が認められた.すなわち,野生型(WT)の花弁では CmCCD4a が高発現していたが,BS および IB-1 の花弁では,WT に比較して発現量が顕著に低かった.IB-2 系統では,IB-1 よりもさらに CmCCD4a の発現量が低下していた.また,WT および BS では少なくとも 4 タイプの CmCCD4a ホモログが発現していたが,IB-1 では 3 タイプ,IB-2 では 1 タイプのみ発現しており,イオンビーム照射系統ではホモログ数の減少が発現量低下の要因であると考えられた.