抄録
ウメ‘南高’樹体について,安定同位体 13C を用いて収穫後の夏季(8 月)から落葉期直前の秋季(11 月)までの毎月に同化された炭水化物含量の各器官中における変化を,翌年 5 月の生育期まで調査した.幼果と新葉の 13C 含有率は 5 月上旬に著しく低下した.このことから,以降のこれらの器官の生育は,貯蔵養分への依存から当年の同化養分への依存に転換することを示唆している.8,9,10 月の同化養分は,翌年 5 月にそれぞれ 2 年生枝,根および幹に多くの量が転流していた.11 月の同化養分は,花芽や花に著しく多くの量が転流した反面,越年器官への転流量は少なかった.以上のことから同化養分の各器官への貢献度は同化された月によって異なることが明らかとなった.11 月の同化養分は花芽や花の生育に重要な役割を担っていると考えられることから,ウメ果実の安定生産のためには,落葉期まで葉を健全に保つことが重要であることが示唆された.