2013 年 82 巻 2 号 p. 114-124
リンゴの葯培養で効率的に胚様体を形成させる手法の確立を目的として,花粉ステージと花蕾ステージの関係,および葯培養前の花蕾の低温処理期間中の花粉ステージの変化と胚様体形成率との関係を調査した.まず,花蕾ステージを“Tight cluster”,“First pink”,“Pink”,“Full pink”の四期に分類し,形態的特徴をもとに各ステージの特徴を定義した.花粉ステージは,“四分子期”,“一核期前期”,“一核期中期”,“一核期後期”,“二核期前期”,“二核期後期”,“花粉成熟期”の七期に分類し,各期の形態的特徴を明らかにした.“Tight cluster”期の花粉は主に四分子期から一核中期に,“First pink”期は主に一核中期から一核後期に対応していた.また,“Pink”期は二核後期,“Full pink”期は花粉成熟期に対応していた.25 日間の花蕾の低温処理は胚様体形成に効果的であった.なかでも,低温処理 25 日目に一核後期から二核前期であった花粉は効率よく胚様体を形成した.この低温処理期間と花粉ステージの関係を実現するためには,25 日間の低温処理期間中の花粉ステージの進行を見越して,多くの花粉が一核前期と二核前期にあたる“Tight cluster”後期から“First pink”前期にかけての花蕾を採取することが適当を判断した.獲得したシュートについて SSR マーカーによる調査を行ったところ,すべてのシュートは半数体由来であることが判明した.