抄録
日本のビワ品種や遺伝資源合計 94 品種・系統を供試して,リンゴとナシ由来の SSR マーカーを用いて,遺伝的多様性の解析を行った.リンゴ由来の SSR マーカーでは 24 種類のうち 14 種類が,ナシ由来の SSR マーカーでは 24 種類のうち 10 種類が,ビワで明確なバンド増幅を示した.選択した 9 種類の SSR マーカーを用いて,日本や他国から導入した 61 の栽培品種,日本で採取した 33 の自生系統の合計 94 品種・系統について解析した.SSR 遺伝子型の類似度を基に UPGMA 法で作成した樹形図では,2 つの明確なグループが見出された.1 つのグループは日本や他国から導入した栽培品種,もう 1 つのグループは日本の自生系統のみから構成されていた.同一の SSR 遺伝子型を示す品種が見出され,異名同品種または変異体品種と推察された.このように,SSR マーカーは,ビワの遺伝的同定に有効であった.現在の日本のビワ品種の成り立ちについて考察した.