2013 年 82 巻 4 号 p. 301-311
果樹の枝変わりは一個体内で発生した突然変異であり,その変異を除いては変異枝と通常枝でゲノム背景が全く同じである.このため,枝変わりは作物の重要形質を司る遺伝子同定する上での理想的な材料である.我々はセイヨウナシ‘La France’に発生した枝変わりであり,通常枝と比較し巨大な果実を着ける Giant La France(GLaF)に着目した.GLaF においては,果肉特異的な細胞サイズの増大とゲノム DNA 量の倍加が観察される.本研究では GLaF と‘La France’間で発現量の異なる遺伝子を見出すために,開花 1 週間前のそれぞれの花床から抽出した RNA についてマイクロアレイ解析を行った.花床はレーザーマイクロダイセクション法により単離した.解析の結果,核局在タンパク質および細胞骨格関連タンパク質をコードする遺伝子の発現量が GLaF で高い傾向が見られた.またこれらの遺伝子の中には過去にゲノム DNA 量の倍加に関与することが報告されている遺伝子が存在した.これらの遺伝子は GLaF におけるゲノム DNA 量の倍加と果実サイズ増大に関連していると考えられた.