Journal of the Japanese Society for Horticultural Science
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原著論文
速効性と緩効性窒素肥料を施用したポットにおけるトマトのヘアリーベッチ由来窒素の吸収
杉原 雄一上野 秀人平田 聡之荒木 肇
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2014 年 83 巻 3 号 p. 222-228

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抄録
トマト生産においてカバークロップとしてのヘアリーベッチ(Vicia villosa R.,以下 HV)と化学肥料の効率的な施用方法を確立するために,HV,速効性肥料(Fast)および緩効性肥料(Slow)から放出された窒素のトマトへの吸収について,安定同位体 15N を利用して調査した.窒素の速効性肥料(硫安)と緩効性肥料(LP-S100)を供試して,両者の混合割合を 2 : 8(Fast + Slow)と 0 : 10(Slow-only)とした.窒素施肥量を 240 kg N·ha-1 として,土壌培養試験を行うと,培養 4週間において Fast + Slow では高濃度の無機態窒素環境が形成された.同様の施肥条件を用いて,1/2000 a のワグネルポットでトマト‘ハウス桃太郎’を栽培すると,15N でラベルした HV(0.89 atom% excess)を土壌中にすき込むことで,定植12 週後のトマトの植物体乾物重は HV 無添加より有意に増加したが,窒素肥料の混合割合による差異は認められなかった.HV 由来窒素は主に定植 4 週後までに吸収され,その吸収量には Fast の有無による差異はなかったが,吸収した全窒素に対する HV 由来窒素の含有率(%Ndfhv)は Fast を施用しない Slow-only で有意に高くなった.しかし,この差異も定植 8 週以降は認められなかった.トマトによる窒素吸収は栽培終了時の定植 12 週後まで続いた.以上の結果から,HV 由来窒素は速効的であった.生育初期においては,トマトへの窒素吸収に土壌・肥料由来窒素と HV 由来窒素の間で競合関係があり,多量の土壌・肥料由来窒素が存在すると HV 由来窒素の吸収が抑制される.この試験で得られた知見は,トマト生産における HV と化学肥料の適切な混合体系の確立に寄与する.
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