園芸学会雑誌
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トマトの生育ならびに開花•結実に関する研究 (第3報)
育苗期の窒素•燐酸•加里の施用量が生育ならびに花芽形成に及ぼす影響
斎藤 隆畑山 富男伊東 秀夫
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1963 年 32 巻 2 号 p. 131-142

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抄録

本報告は砂耕栽培によつて育苗期の窒素•燐酸•加里の施用量がトマトの生育ならびに花芽の形成にどのように作用するかを実験したものである。
1. 窒素施用量の影響: 窒素の濃度を5, 20および120ppmとした。窒素濃度の高いほど苗の発育は旺盛で, 花芽の分化が早く, 花芽着生節位は低く着花数が多い。
2. 窒素施用量と光の強さの組み合わせの影響: 窒素濃度は20, 80および160ppmの3区とし, 光の強さは100%と50%日照区の2区とした。遮光下ではいずれの窒素濃度区においても軟弱な徒長した生育を示し, 花芽の分化が遅れ, 着花節位が上昇し, 着花数が少ない。日照下では窒素の濃度の高いほど苗の発育が速やかで強剛な生育を示し, 花芽の分化が早く, 着花数が多い。光が充分照射する下では窒素のための徒長ということは起こらず, 光が不足の下で起こる。
3. 燐酸施用量の影響 燐酸の濃度を0.1, 0.5, 2, 10, 60および180ppmの6段階にして育苗した。燐酸濃度の高いほど苗の発育が速やかで, 花芽の分化が早く, 着花節位は低く, 着花数が多く, 花芽の発育が早い。0.1, 0.5ppm区では生育ならびに花芽の分化は著しく遅れ着花節位が著しく上昇している。
4. 加里施用量の影響 加里の濃度を0.5, 10, 60および180ppmの4区とした。0.5ppm区では苗の発育が悪く, 花芽分化が遅れ, 着花数も僅かながら少ない。加里濃度が高過ぎても極く僅かであるが着花数は減少している。
5. 花芽形成と体内成分との関連 窒素•燐酸•加里の濃度を変えた条件下で育苗した場合の花芽の形成と苗の体内成分 (窒素•炭水化物含量) との関係をみると, 花芽の分化が早く起こり, 分化数が多かつた処理区, すなわち日照下の窒素濃度の高い区および燐酸濃度の高い区においていずれも窒素特に蛋白態窒素と炭水化物特に全糖とが共に多くなつている。すなわち, 苗の発育が充実して生体重/草丈の値が大で強剛な発育を示すような場合は, 全糖と蛋白態窒素とが共に多く, そのような場合に花芽の分化が早く起こり, 分化数が多く, 発育も充分に行なわれることが認められた。

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