園芸学会雑誌
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温州ミカンの生育と母材を異にした土壌との関係 (第1報)
ポット試験による温州ミカン幼木の生育
坂本 辰馬奥地 進薬師寺 清司
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1964 年 33 巻 4 号 p. 280-286

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抄録
土壌の母材と温州ミカンの生育との関係を明らかにするために, 6種の土壌を供試して宮川早生温州ミカンを4年間ポット栽培し, その生育調査ならびに土壌要因の解析を行なつた。供試土壌は伊台土壌(花崗閃緑岩), 砥部土壌(結晶片岩-石墨質), 関前土壌(秩父古生層硬砂岩, 石灰岩々砕を多量に含む), 吉田土壌(中生層白堊紀砂岩), 小野土壌(洪積層), 小野火山灰土壌(腐植質の黒音地)で, いずれも未耕地の土壌を用いた。
1. 試験2年目から3年間の新梢の生長量, 3, 4年目の果実収量, ならびに試験終了時の幹周肥大量などからみると, 供試土壌の中では関前土壌がもつともすぐれた。他の土壌では, 2年目の新梢生長にはほとんど差がなかつたが, 3年目になると, 吉田, 小野および小野火山灰の各土壌で生長が旺盛になり, 収量が低下した。反対に, 伊台および砥部土壌では, 生長が劣り収量が多くなつた。4年目になると, 吉田および小野土壌の生長は伊台および砥部土壌よりまさり, 収量も多かつた。小野火山灰土壌では, これらの土壌の中間的な生育の様相を示した。幹周肥大量は, 吉田, 小野および小野火山灰の各土壌が砥部および伊台土壌より大きかつた。
2. 土壌要因については, 置換性塩基に富んだ関前土壌での生育がもつとも旺盛であつたが, これは, これらの化学的性質とともに, 窒素の肥効が高かつたためと考えられる。他の土壌では, 供試樹の生育と土壌の化学的性質(有機態炭素, 全窒素, 塩基置換容量, 置換性塩基, 土壌リン酸などの乾土100g当たりの分析値ならびにpHなど)との間に直接の関係は認められなかつた。酸性の強い吉田土壌および小野土壌, さらに石灰および塩基の飽和度の低い小野火山灰土壌で生育が劣らなかつたのは, 本試験のポットの条件では, 土壌の化学的要因よりも窒素の肥効の影響が強かつたためと推察された。細~小礫の多い伊台土壌ならびに巨礫に富んだ砥部土壌で, 試験4年目に供試樹の生育がやや劣つたのは, 窒素の溶脱流失が激しいためと考えられた。
3. 以上の結果から, 温州ミカンの生育に対する土壌の母材の影響としては, 物理的な要因り強い場合と化学的な要因の強い場合のあることが明らかになつた。
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