園芸学会雑誌
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クリの種および品種におけるポリフェノール性物質, ならびにその含量とクリタマバチ抵抗性との関係
鳥潟 博高松井 鋳一郎
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1966 年 35 巻 2 号 p. 89-97

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抄録
1~2年生のクリの樹皮に含まれるポリフェノール性物質について分析し, ニホングリならびにチューゴクグリの種間および品種間差異を明らかにし, さらにクリの栽培上問題となつているクリタマバチ抵抗性との関係について検討した。
1. クリの樹皮に含まれるポリフェノール性物質は20種以上存在し, 没食子酸, ロイコシアニジン, フラボノール, ガロカテキシ, エラグ酸, 未知のカテコールタンニンがみられた。ほかにスコポレチンおよび6, 7-ジメトキシクマリンと推定されるものがある。
2. クリの種間に, 定性的定量的差異をみとめた。ヒロガロールタンニンはニホングリおよびチューコクグリのいずれにも存在するが, カテコールタンニンはニホングリに多く存在し, チューゴクグリには少ないか全くみられない。ヘーパークロマトグラムを比較すると, チューゴクグリはニホングリと異なつている。さらにチューゴクグリの中でも北支産のクリと南支産のそれで異なる。すなわち, 前者は難水溶性のピロガロールタンニンが少ないが, 後者は多い。また易水溶性ピロガロールタンニンは両者とも多かつた。カテコールタンニンの含量はニホングリが乾物1g当り10~20mg, チューゴクグリは5mg前後で, 前者の方が数倍多い。ピロガロールタンニンは差がなく85~96mgである。
3. クリタマバチ抵抗性とタンニン含量の関係をみると, 抵抗性品種は相対的にカテコールタンニン, ロイコシアニジンが多く, ピロガロールタンニンが少ない。それらの含量はそれぞれ, 10.3~22.4mg, 0.24~0.61(吸光度, Eo), 70~110mgである。感受性品種はカテコールタンニン, ロイコシアニジンおよびピロガロールタンニンがそれぞれ, 2.7~16.2mg, 0.00~0.49(吸光度, Eo), 90~120mgであつた。
クリタマバチ抵抗性とカテコールタンニン, ロイコシアニジンおよびピロガロールタンニン含量の相関係数をもとめるとそれぞれ, +0.782, +0.458, +0.476で, いずれも5%危険率で有意で, カテコールタンニンについては1%危険率で有意であり, とくに高い相関のあることがわかつた。
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