抄録
ブラジルヤシ, カナリーヤシおよびワシントンヤシモドキの発芽機構および最適発芽条件を知るために, 1964~1966年に実験を行なつた。
1. ブラジルヤシの種子は, 堅い内果皮に囲まれているが, 発芽こうには薄い果皮のせんがある。発芽の際, 幼根は短く伸び, 肥大した胚軸部は小さな舌状を呈すので, この発芽は隣接小舌発芽といえる, カナリーヤシは, 発芽孔をおおつた部分が切断層から分離し, 伸長した幼根の先端で押し上げられる。その発芽は殻より離れた位置で行なわれ, いわゆる管状発芽を示す。ワシントンヤシモドキの種子の構造は, 穀類の種子のように単純で, 発芽は容易である。発芽の際, 幼根はやや彎曲するがブラジルヤシに近い発芽をする。
2. カナリーヤシおよびワシントンヤシモドキは, 休眠や不発芽のような発芽障害は認められなかつたが, ブラジルヤシにはある種の障害があつた。
3. 適温での発芽開始までの日数は, ブラジルヤシ約60日, カナリーヤシ約20日, ワシントンヤシモドキが約8日であつた。
4. 最適発芽温度は, ブラジルヤシが30°C付近で, カナリーヤシは30~35°Cで, ワシントンヤシモドキは25~35°Cであつた。
5. は種用土の種類ではカナリーヤシおよびワシントンヤシモドキは川砂, バーミキュライトがよく, ブラジルヤシは粘質壌土がはるかによかつた。