1976 年 45 巻 2 号 p. 160-167
タマネギの花芽形成における低温感応性と苗の性状との関係について調査した.
1. 低温に感応して花芽形成しうる最小の葉しよう径は, 泉州黄では6mm前後であり, 札幌黄では3mm前後である.
葉しよう径3~11mmの苗を低温処理した場合, 大苗ほど花芽形成に要する低温処理期間は少なく, したがつて, 苗の発育に伴つて低温感応性を増大するものと認められた.
花芽形成に最も有効な9°C下で低温処理をした場合, 必要な処理日数は, 泉州黄では葉しよう径10mm以上で, 札幌黄では葉しよう径9mm以上で最も少なく, それぞれ30~40日, 20日前後であつた.
2. 時間令は同じでも葉しよう径が異なると, 葉しよう径が大きいほど花芽形成に要する低温期間は少なく, 低温感応性には時間的令より, 葉しよう径の大きさのほうが大きく関与するものと認められた.
3. 少チッ素区の苗は多チッ素区の苗に比べて草丈, 葉数, 葉しよう径はともに明らかに劣つたが, 低温感応性は逆に増大した.
4. 大苗 (葉しよう径平均11.6mm) では葉身摘除によつて低温感応性はほとんど影響を受けなかつた. いつぽう小苗 (葉しよう径平均8.3mm) では葉身摘除によつて低温感応性が低下し, 摘葉の程度が強いほどその低下が大きかつた.
5. チッ素施与量と摘葉の実験結果から低温による花芽形成の機作について若干の考察を加えた.