園芸学会雑誌
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カブの肥大に関する形態的•組織化学的観察
岩崎 文雄武田 善行
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1977 年 46 巻 2 号 p. 193-200

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抄録
1. カブの肥大現象を形態的, 組織解剖学的および組織化学的に検討を加えるために実験を行なった.
2. 形態的にははい軸の伸長と肥大の過程を, 組織解剖学的にははい軸部の組織学的変化を, 組織化学的には糖, 核酸およびリグニンについて検討を加えた.
3. その結果, はい軸の伸長生長は供試した各品種とも6葉ころまでに停止したが, 肥大開始は品種によって差がみられ, 肥大の早い"寄居カブ","金町コカブ"は4葉ころから肥大が開始し, 6葉時には肉眼でも確認できたが,"小岩井カブ"では10葉時でも肥大が開始しなかった.
4. カブの肥大ははい軸の中央部分から姶まり, これにはい軸の下部と上部が加わって起こるのに対して, 形の長くなるダイコンの肥大は主根が肥大し, これにはい軸部分が付加して起こる. ただ, ハツカダイコンではカブと同様な肥大の仕方が観察された.
5. カブの肥大を組織学的に観察してみると, 4葉ころまでに完成された形成層環内部の木部柔組織のまわりに新しい師部が形成し活性化するため, 形成層が分断されるようになって組織の増大が起こり, 肥大の起こらぬ.品種とは著しく異なった形態的変化が認められた.
6. 組織化学的には肥大の起こらぬ品種に比較して,カブのはい軸は4葉時以降でも糖, 核酸の強い反応が認められた. また, 特にリグニン反応では顕著な差異が認められ, 肥大したカブではリグニン反応が極端に弱かった.
7. カブ, ダイコンとも, 肥大が開始すると幼苗時に形成された初生皮層がはく(剥)脱する現象が認められた. これは初生皮層が内部組織の形態的変化(肥大)に対応できなくなったためと考えられ, 組織学的, 組織化学的にもそれが確認された.
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