園芸学会雑誌
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さし穂の光合成に関する研究
(第1報)数種の植物の見かけの光合成速度の変化について
町田 英夫小松 春喜大石 惇細井 寅三鴨田 福也
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1977 年 46 巻 2 号 p. 274-282

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抄録
1. さし木期間中におけるさし穂の光合成作用の働きを明らかにするために, ツバキ, サザンカ, サンゴジュ, レンギョウ, キクの緑枝ざしを供試し, 通気法により赤外線ガス分析計を用いて, さし木後のさし穂の見かけの光合成速度の変化を調査した.
2. さし木期間中の見かけの光合成速度の変化は, いずれの種類においても, さし木後一時低下し, その後回復する傾向を示したがその低下と回復の早さは, 発根容易なキクとレンギョウにおいて著しく大であった.
3. ツバキ, レンギョウ, キクについて, 光強度を変えた場合におけるさし木期間中の見かけの光合成速度の変化を調査した結果は, いずれの種類においても10kluxまでは, 光強度が増すにつれて急激に増大し, 20kluxでほぼ最高の値に達し, それより光強度が大となると,かえって低下する傾向がみられた.
4. サザンカとサンゴジュを供試して, 葉量の異なるさし穂について見かけの光合成速度を比較したところ,さし木当日では葉量の違いによる影響は殆んどみられなかったが, その後の光合成速度の低下が, 葉量のもっとも多いさし穂で, とくに著しかった. また, さし穂1本当りの見かけの光合成速度についてみると, 葉量の多いものほど常に高い値を示したが, 両種ともに葉量のもっとも多いさし穂で, さし木後, その値が一時急激に低下する現象がみられた. しかし, その後の回復もまた早かった.
5. さし木期間中のさし穂の葉内水分含量の変化を5種の植物について調査した結果, いずれもさし木後減少し, その後再び増加する傾向を示した. それらの変化の様相は, 見かけの光合成速度の変化と大略似た傾向を示した. また, ツバキを供試して, さし木期間中の葉内クロロフィル含量の変化を調べた結果, さし木期間中を通じて徐々に減少する傾向がみられた.
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