園芸学会雑誌
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花きにおける放射線変異の作出とその育種的利用に関する研究
(第2報)ウォールフラワーにあらわれた半八重咲およびモス=バーベナにあらわれた白色花系統について
斎藤 清
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1977 年 46 巻 3 号 p. 331-337

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抄録

(1) 花きにおける新変異形質作出のための育種的手法として放射線照射が効果的に採用されており, 従来よく知られた種類としては栄養繁殖を常とする宿根草や球根のいくつかを挙げることができる. 一方, 種子繁殖を常とする1年草では, 照射処理によって偶発した変異の遺伝性や後代における発現状況を確認する必要があるので, 前者ほどに適切な例は稀となっている. 本実験はこの後者の場合として, ガンマー圃場内に栽植された緩照射株に生産された種子の実生を通してえられたウォールフラワーの半八重咲およびモス=バーベナにあらわれた白色花系統における変異性を明らかにしその利用度を考慮したものである.
(2) ウォールフラワーにあらわれた微八重ないし半八重咲花は本来の4枚花弁に1~数枚のさじ型奇形の過〓が不規則に加わるもので, その程度の強まるにつれて雄•雌ずいの退化もおこり, しだいに不ねんになってくる. 自然結実種子によるγ3世代では大多数の株が微八重ないし半八重咲花をつけ, この形質が単純な劣性であることを思わせた. しかし, 従前から存在している自然発生の半八重咲市販品種に比べると, この新系統は花序が小さく小花が密集し葉幅もやや狭いので実用的価値は低いようである.
(3) モス=バーベナにあらわれた白色花系統はγ23世代の実生ですべて白色花となり, この形質は有色に対して単純な劣性であると思われる. 原品種に比べて小花がわずかに小さく葉縁にいくらか円味をもつ程度の差はあるが, 草勢はほとんど変わることなく, 花壇用の白色材料として利用されえよう. 文献によれば変種 albaの存在が知られており, その成立もおそらく以前にあらわれた花色喪失の偶発的な自然突然変異によったものであろう.

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