1977 年 46 巻 3 号 p. 338-342
沖永良部島産テッポウユリ「ひのもと」(球周22cm以上) を1975年7月28日入手し, 8月21日実験を開始するまで室内暗所 (約25°C) に貯蔵した. 温湯処理を施さない親りん茎から中部りん片を採取し, ピートに深さ10~15mmに植えこんで, 1.5, 3, 4.5, 6か月間25°Cで scaling した. ひきつづいて, 3°Cで0 (無低温),1, 2, 3, 4, 5週間 chilling したのち20°Cで生育させて出葉を調査した.
Scaling 期間が長くなるにつれて, chilling 後の出葉は早く, 出葉期間は短かい傾向がみられた. 週あたりの最高出葉率については, scaling 期間が長いほど高く,かつ, その出現時期は早くなった.
一般に scaling 期間が長いほど全出葉率は高かった.scaling 期間と組み合わされた chilling の効果はscaling の長さによってかなり異なった. すなわち,scaling 6カ月の場合には chilling 期間のいかんにかかわらず出葉率は高かった. これに対して scaling 4.5か月以下の場合には chilling が比較的短かいとき出葉率は高くなった. いいかえると, chilling が長くなると,出葉はむしろ抑制された.
以上の結果から, scaling 期間であらわされる age がすすむほど仔球は出葉しやすくなることがわかる. また, 低温の刺激によって仔球から出葉するためには, 高温の蓄積が必要であると考えられる.