抄録
エダマメは収穫後室温に放置すると外観の変化よりも急速に食味が低下するものである. 本研究は食味の変化に関係する要因を調べ, 品質保持の方法, とくに実際的見地から室温において可能な方法を見出そうとしたものである.
標準的な貯蔵形態としては, さやを有孔ポリエチレン袋に詰め0°,5°及び20°Cに保持した. 官能検査の結果は, 20°C 2日で相当食味の劣化が起こることを示した. 外観の変化は20°Cで数日, 5°Cで2週後にさやの黄化が顕著になり, 0°Cでも1か月以上を経ると鮮度低下が明らかになった.
豆に含まれる全糖, 遊離アミノ酸 (ニンヒドリン陽性物質), アスコルビン酸は20°C2日で激減し, 5°Cでも1週後には糖とアミノ酸に相当の損失がみられた. 0°Cでは2週後でも糖は変らなかったが, アミノ酸はかなり減少した. エダマメ収穫後の食味の低下は, 主として糖及びアミノ酸の減少によるものと推測された.
代謝阻害剤などを減圧浸透法により豆に吸収させたところ, 糖はNaF, アミノ酸はシグロヘキシミド及び2,4-Dinitrophenol (DNP) により減少がかなり抑えられた. DNPは減糖抑制にも若干の効果があった.
さやを0.07mmのポリエチレン袋に詰め, N2またはCO2で空気を置換, または真空ポンプで減圧として密封したところ, 糖の損失は明らかに少なく, アミノ酸はある程度の増加を示した. 単にポリエチレン袋に密封するだけでもほぼ同程度の効果がみられた. しかし. 20°Cでは密封に伴うガス障害が現われるので, ごく短期の保存 (3日) に限られる. 5°Cでは, 2週までは障害もなく成分の保持も優れていた.
さやを枝から離さず, 葉及び根を付けた植物体全部を0.03mmポリエチレン袋に詰めて保存したところ, 20°Cにおいても糖の変化は極めて緩慢であり, アミノ酸は減少せず, 数日間は良好な食味を保った. 外観の保持にも勝れ, さやは10日後も緑色を失なわず, ガス障害の発生もみられなかった.