園芸学会雑誌
Online ISSN : 1880-358X
Print ISSN : 0013-7626
ISSN-L : 0013-7626
イチゴ果実の品質保持に対する収穫熟度と低温流通の効果
青柳 光昭牧野 朗
著者情報
ジャーナル フリー

1981 年 49 巻 4 号 p. 583-591

詳細
抄録
イチゴ果実の収穫時における熟度と品質の関係を調査した. また, 高品質なイチゴを供給する目的で, 100%着色果を収穫し低温流通にのせた場合の品質保持効果について調査した.
1. 果実の着色が進むにつれてアントシアン含量は直線的に増加した. また, 全糖含量は増加し, 酸含量は減少する傾向にあり, そのため糖-酸比の増加が顕著であった. すなわち, アントシアン含量と全糖含量の相関係数は0.3~0.5であり, 酸含量との相関係数は-0.2~-0.6であったが, 糖-酸比との相関係数は0.6~0.7であった. 果実硬度は着色進行に伴なって低下し, 100%着色果は20%着色果の1/2以下に低下した. ビタミンC含量は着色とともに増加する傾向にあった.
2. 50%着色果を収穫し20°Cで3日間保管すればアントシアン含量は増加し, 100%着色果の状態にまで着色は進行した. しかし, 収穫時に100%着色果であった果実に比べ全糖含量は少なく, 酸含量がやや多いため糖-酸比は明らかに劣った. また, ビタミンC含量も少なかった. 保管温度が3°Cであるならば, 3日間の保管中の品質変化は極めて少なかった.
3. 100%着色果を収穫し, 落下処理を加えた保管試験の結果, 常温流通を想定した20°C保管区における損傷果の発生率は60%であるのに対し, 低温流通を想定した3°C保管区では20%に留り, 低温流通は損傷果発生を抑止する効果の高いことが認められた.
4. 50%着色果を収穫し, 常温 (20°C) 流通したイチゴより, 100%着色果を収穫し低温 (3°C) 流通したイチゴの方がおいしいことを指摘した人の割合は7割以上であった.
著者関連情報
© 園芸学会
前の記事 次の記事
feedback
Top