抄録
障害が毎年発生する12年生‘二十世紀’樹を中間台として, ‘新水’‘幸水’‘豊水’‘長十郎’‘新興’および‘二十世紀’を亜主枝ごとに高接ぎした.
3年後同一条件下における障害発生の品種間差を調査するとともに, 幼果および収穫時の果実における果肉中の無機成分組成と障害との関係について検討した.
1.‘新興’‘長十郎’‘二十世紀’では障害発生率が高くまたその症状も著しく重かった. ‘新水’および‘豊水’ では果肉の硬化を伴わない凹凸を主とする症状の軽い障害が発生した. しかし‘幸水’には障害は全く発生しなかった.
2. 6月上旬に果肉中の無機成分を比較したところ, 障害の著しく発生した‘新興’‘二十世紀’‘長十郎’ではいずれも可溶性K含量が高く, Ca 含量が低かった.
これに対して, 障害程度の軽い‘新水’‘豊水’および障害の発生しなかった‘幸水’では, 前述の3品種に比べて可溶性K含量が著しく低く, また Ca 含量がK含量に対して相対的に高かった.
また不溶性分画の一つ, 0.2%蓚酸アンモニウム可溶性分画では, 障害の発生程度の強かった‘新興’‘長十郎’ ‘二十世紀’にK含量が高く, 程度の弱かった‘新水’‘豊水’および発生をみなかった‘幸水’ではきわめて低かった.