抄録
現在のわが国流通バナナの大部分を占めるフィリピン産‘Cavendish’の成熟特性を調査した.
15°C~35°Cで追熟させた場合, 30°C以上の温度では果皮が褐変して完全には黄化せず, 特に35°Cでは果肉も boiled 状となった. 15°Cでは果肉は正常に成熟したが, 果実両端の緑色が消失せず, 果皮と果肉の熟度が一致しなかった. 20°C及び25°Cでは, 正常な成熟がみられ, この範囲内が追熟の適温と思われた.
1~5000ppmの各種濃度のエチレンで24時間処理し, 20°C一定温度下で追熟させた場合, その後の成熟様相には処理濃度間の違いは認められなかった.
果実が樹体に着生している間は, 開花後120日ごろまで肥大が続き, 最終的には裂果を伴って黄化したが, 正常な形での成熟現象は起こらなかった. しかし, デンプン含量及び有機酸含量の変化からみて, 開花後90日ごろから樹上でも内的な成熟が始まるように思われた.
開花後65~105日の果実を日本まで輸送し, 25°C一定温度で追熟させた場合, 65日及び75日収穫果では入手後の green life は10日以上あったが, 85日及び95日収穫果では3~4日と短くなり, 105日のものは輸送中に黄化してしまった. しかし, climacteric 開始以後の成熟特性には, 収穫熟度による違いはほとんど認められなかった.
以上のことから, 現在のフィリピン産‘Cavendish’バナナの成熟特性をみると, 過去の主流品種である‘GrosMichel’や‘仙人蕉’と基本的には変わらないように思われる. しかし, 糖組成や温度に対する反応など, 細部にわたっては異なる面もみられるため, 今後バナナを取り扱う上で注意が必要であろう.