抄録
有機物の施用は腐熟が前提であるが, そうでない場合には樹勢を一時的に弱らせる場合がある. 著者らはその原因を究明するために, 有機物施用に伴うエチレンの発生を調査し, ブドウ樹の生長に及ぼすエチレンの影響について検討した.
エチレンの発生量は施用有機物の種類により異なった. 特に, ブドウ, カンキツ, ニホンナシ, モモ及びカキの枯葉, カンキツの生根, 更には稲わらなどの施用土壌からはエチレンの発生が著しかった. これらのエチレンの発生には土壌温度, 土壌水分及び土壌の通気性が大きく関与しており, 土壌微生物の働きによることが推察された. 一方, よく腐熟させた有機物を施用するとエチレンの発生は著しく減少した. エチレンの発生量とブドウ幼木の生長との間には負の密接な関係があるものと推察される.