園芸学会雑誌
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キリシマエビネ, ニオイエビネ及びアマミエビネの種子形成並びに種子発芽について
長島 時子
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1984 年 53 巻 2 号 p. 176-186

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抄録
キリシマエビネ, ニオイエビネ及びアマミエビネの3種類のランを供試し, 胚珠形成及び受精後の種子形成過程を組織学的に観察するとともに, 種子形成過程と種子発芽との関係を追究した.
1. 子房の大きさは, いずれのランにおいても受粉すると急速に増加した. 子房の大きさは, キリシマエビネでは受粉後60日ごろに, ニオイエビネでは受粉後50日ごろに, アマミエビネでは受粉後70日ごろに, それぞれ一定値に達した.
2. 種子及び胚の大きさは, いずれのランにおいても, 受精すると急速に増大した. 種子の大きさは, キリシマエビネでは受粉後70日ごろに, ニオイエビネ及びアマミエビネでは受粉後80日ごろに, それぞれ一定値に達した. 胚の大きさは, いずれのランにおいても受粉後95~100日ごろに, それぞれ一定値に達した.3. 胚珠形成は, キリシマエビネ及びニオイエビネでは受粉後38~40日ごろに, アマミエビネでは受粉後43~45日ごろに, それぞれ完了した. 重複受精は, キリシマエビネ及びアマミエビネでは受粉後48~50日ごろに, ニオイエビネでは受粉後43~45日ごろにそれぞれ行われた. 胚のう核は, いずれのランにおいても5~6個観察された. 受粉から胚発生完了までに要する日数は, キリシマエビネ, ニオイエビネ及びアマミエビネのいずれにおいても95~100日であった.
4. 胚発生過程の様相はキリシマエビネ, ニオイエビネ及びアマミエビネのいずれにおいても, 同様であった.すなわち, いずれにおいても4細胞期ではA2型であり,4細胞期以降の胚発生過程はE型 (Liparis pulverlenta型) に類似していた. またいずれにおいても, 胚は主としてca細胞から形成された.
5. 受精後の胚乳核は, キリシマエビネ, ニオイエビネ及びアマミエビネのいずれにおいても, 3~5個が観察された. また, いずれにおいても胚柄の存在が観察された.
6. 種子の発芽能力は, キリシマエビネではインターメディアリー期 (受粉後80日ごろ) 以降に, ニオイエビネではほぼ16細胞期からインターメディアリー期の間(受粉後80日ごろ) に, アマミエビネでは前胚の4細胞期以前 (受粉後60日) ごろにそれぞれ認められた. なお, いずれにおいても胚発生完了前後において発芽率が最も高かった. また, ニオイエビネでは, 明所培養に比較して暗所培養において発芽率が高かった. 培地としては, MS培地に比較してH培地が種子発芽に対して優れていた.
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