園芸学会雑誌
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リンゴの黄色品種の有袋果と無袋果における糖質と有機酸の相違, 並びにそのアントシアニン色素の生成に及ぼす影響
野呂 昭司工藤 仁郎橘和 丘陽
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1989 年 58 巻 1 号 p. 17-24

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抄録
黄色品種の‘陸奥’及び‘ゴールデンデリシャス’を供試し, 有袋果と無袋果のアントシアニン生成量の差異を比較した. また, 8月下旬から10月中旬の成熟期にかけて有袋果と無袋果の果皮における糖質及び有機酸の成分的な相違を検索するとともに, さらに, その相違の見られた物質のアントシアニン生成に及ぼす影響を果皮切片を用いて検討した. その結果は次のとおりである.
1. 圃場実験の結果, 両品種とも有袋果は無袋果よりもアントシアニン生成量が増加した.
2. 両品種の有袋果及び無袋果とも果皮における可溶性の主要糖質はグルコース, フルクトース, ソルビトール及びシュークロースである. これらの糖質について有袋果と無袋果における採取時期別相違を見ると, 何れの採取時期でも両品種の有袋果は無袋果よりフルクトースが多かった. しかし, 他の糖質はあまり差が見られなかった.
3. 果皮における主要有機酸はリンゴ酸とキナ酸で,それらは有袋果及び無袋果とも採取時期が遅くなるにっれて減少した. しかし, 両品種とも有袋果と無袋果との間には量的な相違が見られなかった.
4. 他の微量有機酸についても採取時期別に有袋果と無袋果の成分的な相違を検索したところ, クエン酸の量的差異が確認された. この有機酸は両品種とも何れの採取時期でも有袋果が無袋果より多かった. 特にその差は採取時期の早い8月下旬から9月下旬の未熟果で大きかったが, 熟期の進んだ10月中旬ではその差は減少した.
5. 市販のフルクトースとクエン酸 (Na塩) を供試し, それらが果皮のアントシアニン生成に対する影響を検討した. その結果, フルクトースは両品種の有袋果及び無袋果ともアントシアニンの生成増加に対する影響は見られなかった. 一方, クエン酸は両品種とも有袋果のみでアントシアニンの生成量を増加したが, 無袋果ではその効果が見られなかった.
6. これらの結果から, クエン酸は前述のような黄色品種の有袋果のみでアントシアニンの生成増加に何らかの関連があるものと推察された.
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