抄録
キウイフルーツ果実の発育•成熟特性と, それに及ぼす産地及び栽培年次の影響を検討するため, 晩秋まで比較的温暖である神奈川県小田原市と秋季早くから気温低下がみられる山梨県牧丘町の果樹園で栽培されている‘ヘイワード’を供試して果実の特性調査を行なった. 調査は幼果期から成熟期までの果実の肥大 (果径, 生体重, 乾物重), 果肉硬度, 呼吸及びエチレン排出量, 可溶性固形物含量, 滴定酸度, 糖及びデンプン含量, 並びに有機酸含量の推移について行なった.
1. 果径は, 開花後6~8週間目頃まで急激に肥大し, その後は開花後20週間目頃まで緩やかな肥大を示した.
2. 果実の呼吸量は, 幼果期に最も高く, 発育に伴い漸減して開花後20±2週間目で最小となり, その後再び増大する傾向を示した.
果実からのエチレン排出は全発育期間をとおして認められなかった.
3. デンプン含量は, 発育に伴い増加し開花後20週間目頃に最大となり, その後急激に減少した. 両年次ともデンプン含量には産地間差異が認められ, 神奈川産果実の方が山梨産果実より高かった. 全糖含量及び可溶性固形物含量は, 開花後18~20週間目以降急激に増加した. 主な構成糖はショ糖, 果糖並びにブドウ糖であった.
4. 総有機酸含量には全発育期間をとおして大きな変動が見られなかったが, 主要構成酸 (特にキナ酸とクエン酸) の含量及びその量比は大きく変化した. すなわち, キナ酸含量は幼果で高く (総有機酸含量の90%以上), その後は開花後20週間目頃まで減少した. 一方,クエン酸含量は幼果で低く, 発育と伴に開花後20週間目頃まで増加した. 開花後20週間目以降の果実では,両者はほぼ同量か後者がわずかに上回っていた.
5. 以上の結果から果実諸形質の推移パターンには産地間あるいは年次間での相違が認められないが, デンプン含量, 全炭水化物含量, クエン酸含量及び有機酸組成には産地間差異が認められ, また可溶性固形物含量並びに糖含量の増加時期及び糖組成には年次間差異のあることが明らかになった.