1990 年 59 巻 2 号 p. 341-347
ウメの栄養診断や収量予測の一手段とする目的で, 貯蔵養分蓄積期間中における葉及び短果枝中の全炭水化物や全アミノ酸含量と果実収量との関係を検討するとともに, 多収樹と低収樹の主要なアミノ酸含量の時期的変化を比較した.
1. 9月から11月の葉や, 10月から1月にかけての短果枝中の全アミノ酸含量と収量との間には正の相関がみられ, 1月の短果枝中の全炭水化物とは負の関係であった.
2. 枝葉中の主要なアミノ酸含量の推移をみると, 大部分のアミノ酸は年間を通じて大きな変化はみられなかったが, 葉のアスパラギン酸やプロリンは6, 7月にピークがみられた後, 急激に低下するのに対し, 短果枝のアルギニンは7月以降急激に高まり, 10月に最高に達した.
3. 全アミノ酸の組成をみると, 葉ではアスパラギン酸, グルタミン酸, グリシンが10%前後で比較的高く, また短果枝では大部分が10%以下であったが, アルギニンだけは20%以上を占めていた.
4. 多収樹は低収樹に比べ, 貯蔵養分蓄積期間中の葉のアスパラギン酸含量や短果枝のアルギニン含量が高かったことから, これらのアミノ酸が窒素の栄養診断の一つの指標物質になり得るものと推察された.