園芸学会雑誌
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イチジクの黄化葉の緑化過程における葉緑体の微細構造と核様体の変化
新居 直祐黒岩 常祥
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1990 年 59 巻 2 号 p. 333-340

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抄録

暗条件下で育成したイチジクを明条件下に移し, 黄化葉の緑化過程における葉緑体の微細構造と核様体の変化を光学顕微鏡並びに透過型電子顕微鏡を用いて調べた. 暗条件下の個体について, 葉の生長程度を葉位別に比較したところ, 基部側の大きい葉ほど色素体の発達やその膜構造の増加がみられるとともに, 葉肉組織にも顕著な変化が観察された. 暗条件下において, 色素体が発達するにつれてデンプン粒の大部分は消失したが, 色素体に現われたラメラ形成体に急速な膜生成がみられた. 暗条件下から明条件下に移すと, 緑化とともに葉面積の拡大, 柵状組織細胞や細胞間隙の発達がみられた. 光照射後, ただちにラメラ形成体は消失した. 色素体には暗条件下でもチラコイドの層状構造がみられたが, 明条件下に移すとこれがいっそう増加し, 光照射時間と膜の層状構造の発達とはよく対応していた. 黄化葉あるいは緑化過程にある葉の葉緑体の核様体の変化を蛍光顕微鏡を用いたDAPI(4′, 6-diamidino-2-phenylindole)染色法によって観察した. 若い黄化葉の色素体には比較的大きな核様体がみられ, その後色素体の生長とともに核分裂し, 互に分離していった. 光照射によって, 核様体はさらに分離し, 葉緑体中に均一に分布するようになった. このことからチラコイド形成と核様体の挙動との間に関連があるものと考えられる.

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