園芸学会雑誌
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低温前歴が四季成り及び一季成りイチゴ品種の花房とランナーの発生に及ぼす影響
柳 智博織田 弥三郎
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1990 年 59 巻 2 号 p. 357-363

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抄録

イチゴの四季成り品種 ‘Rabunda’, ‘Ostara’, ‘Kletter-Erdbeere Hummi’ と一季成り品種‘宝交早生’の花房とランナーの発生ならびに葉柄の伸長に及ぼす低温前歴の影響について検討した. すなわち, 自然低温を受けた露地栽培株を1986年11月15日, 12月15日, 翌年1月15日に, また11月6日以降1°Cで冷蔵した株を1月15日に, おのおの最低夜温10°C, 最高昼温30°C, 16時間日長条件のハウス内へ搬入し, その影響を2月19日から6月24日まで調査した.
1. ‘Rabunda’ と ‘Ostara’ の総花房数は処理間の差異が小さかった. 一方, ‘宝交早生’と ‘Kletter’ の総花房数は低温遭遇量が増加するにつれ減少する傾向があった. 各調査時期の花房数についても総花房数と同様な傾向が得られた.
2. ‘Rabunda’ と ‘Ostara’ では, 調査期間内にランナーの発生は認められなかった. 一方 ‘Kletter’ と‘宝交早生’のランナー発生数は低温遭遇量が増すにつれて増加した.
3. 葉柄長については ‘Rabunda’ では3月13日, 4月4日の調査でのみ, また‘宝交早生’では, 調査当初から5月15日まで, 低温前歴の効果が認められた.
4. 以上の結果より, 調査した各形質に及ぼす低温前歴の影響は, ‘Kletter’ と‘宝交早生’に比べ ‘Rabunda’ と ‘Ostara’ で小さいことが明らかになった. また, ‘Kletter’ は四季成りと一季成りの中間的な性質を示したので, 中間性品種とみなした. さらに, 一季成り品種と異なり, 四季成り品種は1)長日条件でも花芽分化する, 2)冬季に低温を受けても以後の花芽分化が抑制されにくい, などの特性を持つため, 春から夏にかけて連続的に開花•結実すると推察した.

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