耐凍性と過酸化物分解系との関係を明らかにするために, リンゴの枝と花芽における耐凍性並一びにG6PDH, HK, PGI, GA3PDH, GSR, GSPOD, DHARD, AsAPOD, POD, カタラーゼの活性の季節変化を測定した. また, G6P, F6P, G1P, GSH, GSSG, アスコルビン酸の濃度の季節変化を測定した. 五炭糖リン酸回路の初発酵素であるG6PDH活性は, 秋の耐凍性増大に対応して増加し, 春の耐凍性減少に伴って減少し, 耐凍性との間に平行関係が認められた. HK, PGI, GA3PDHの活性もG6PDH活性と同調した季節変化を示した. GSR, DHARD, AsAPODの活性は枝組織においては多少の変動がみられたが, G6PDH活性とほぼ同様の季節変化を示し, 冬期間比較的高い活性を保っていた. GSPODは冬期間を通してほぼ一定水準の活性を維持していた. 一方, POD活性は組織や器官によって異なる季節変化を示し, またカタラーゼ活性は冬期間比較的低い水準で推移し, 上記酵素の活性の季節変化と相違していた. G6P, F6P, G1P, GSH及びGSSGの濃度は秋から増加し, 越冬期に高い値を示した. さらに, アスコルビン酸は大きな濃度変化を示さなかったが, 冬期間常に一定水準の濃度を維持していた. 以上の結果から, リンゴ樹の耐凍性は五炭糖リン酸回路に共役した過酸化物分解系と密接に関係しているものと考えられる.