園芸学会雑誌
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ブドウ'巨峰'の結実と小花中の内生植物ホルモンとの関係
小松 春喜中川 昌一
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1991 年 60 巻 2 号 p. 309-317

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抄録
種々の植物生長調節物質の開花前の花房浸漬処理が'巨峰'の結実に及ぼす影響を調査した. さらに整枝法の異なる垣根仕立てと平棚仕立ての'巨峰'樹について,SADH2,500ppmの花房浸漬処理と強剪定が小花中の内生植物ホルモン含量に及ぼす影響についても検討した.
1.生長抑制物質のCCC, SADHの花房浸漬処理は, いずれも対照区に比べ有核果の結実を増加させたが, SADH2,500ppm処理の効果は仕立てのいかんにかかわらず最も大きかった. 一方, 生長促進物質処理は有核果の結実を促進しなかった. SADH処理は, 垣根仕立てでは果粒中の種子数も増加させた.
2.強剪定区では無核果が極めて多かった.
3.SADH処理によって小花中のジベレリン含量は減少し, ABA含量は増加した. 逆に, 強剪定区ではジベレリン含量が開花期に急増し, ABA含量は減少した.小花中のサイトカイニンとIAA含量についても処理による変化がみられ, サイトカイニン含量はSADH処理によって増加したものの, いずれも結実との関係は明らかでなかった.
これらの結果より, '巨峰'の花振いは従来示されている新梢と花房の養分競合のみでは説明できず, 小花中の内生ホルモンの変化, 特にジベレリンとABAが有核果の結実と関連があるように思われた.
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