抄録
貯蔵した細片切りタマネギは蒸煮により, 加工中に著しく褐変することがみられた, この褐変に対する温度と細菌感染の影響を調べた.
1.細片切りタマネギを20°, 8°および1°Cに貯蔵し, 蒸煮すると, 新鮮なものは褐変しなかったが,20°Cでは2日, 8°Cで5~7日, 1°Cでは14~19日貯蔵したものでは加熱後に褐変した.
2.タマネギ特有の香気であるジプロピルジサルファイドの生成がどの貯蔵温度区とも, 1~2日で急減し, 硫化水素は褐変のおこる時期に急増した.
3.フェノール物質は全温度区とも貯蔵初期に増大し, 加熱褐変と違った消長を示した. また遊離アミノ酸も20°Cおよび8°Cでは褐変の発生時期に減少するものの1°Cでは明確な変化はみられなかった. それに対し糖含量 (ブドウ糖, 果糖, ショ糖) は貯蔵初期に増加するものの, 褐変の発生する時期になると全温度区とも減少した. タマネギ細片切りの20°C貯蔵において, ヒドラジン試薬反応物質であるカルボニル化合物は貯蔵中増加した. また蒸した後のほうがその増加は大きかった.
4.細片切りタマネギ表面の細菌数を調べたところ,褐変が生じる時期に, すべての貯蔵温度区で, 107レベルに達した. また70%エタノールで減菌し, 褐変度および生菌数を調べたところ, 生菌数が107レベルに達する時期と加熱褐変を起こす時期は無処理に対して2,3日遅れた. さらに加熱褐変を起こす時期に達した細片切りより抽出した液汁は濃く褐変したが, それより分離し, 培養した細菌および培地はあまり褐変しなかった.
このようなことから, 細片切りタマネギの蒸煮による褐変は細菌感染により誘発されると考えられる. またこの褐変は細菌自身によるのではなく, タマネギ成分が細菌により変成されることによると思われた.