園芸学会雑誌
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モモ種子のエチレン生合成と核内での生成抑制
水谷 房雄ラバニー ゴラム A. B. M.秋好 広明
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1998 年 67 巻 2 号 p. 147-152

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抄録

モモの種子は核から取り出すとすぐにエチレン生成を始める。このエチレン生成能力は種子発育の初期には高く, 成熟してくると減少した。この様なエチレン生成を示すのは種子組織の内で種皮のみで, 胚や胚乳ではエチレン生成はほとんど認められなかった。種子内のガス組成を調べたところ, O2が2.7%, CO2が19.5%, N2が77.9%だった。低濃度のO2はACCからエチレンへの転換を抑えることが知られているが, 高濃度のCO2ばかりでなく, 低濃度のO2によってもACC含量の増加が抑えられた。核から取りだした種子のACC合成酵素とACC酸化酵素の活性を調べたところ, いずれも活性は経時的に減少した。従って, モモの種子は核内では高CO2と低O2によってACC合成の直前かそれ以前の生合成過程が一時的にブロックされて, エチレン生成が抑制されていると思われた。核内でのエチレン生成の抑制と核から離脱後の著しいエチレン生成とモモの核割れ現象や果実の発育, 成熟との関係を考察した。

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