園芸学会雑誌
Online ISSN : 1880-358X
Print ISSN : 0013-7626
ISSN-L : 0013-7626
67 巻, 2 号
選択された号の論文の21件中1~21を表示しています
  • 水谷 房雄, ラバニー ゴラム A. B. M., 秋好 広明
    1998 年 67 巻 2 号 p. 147-152
    発行日: 1998/03/15
    公開日: 2008/01/31
    ジャーナル フリー
    モモの種子は核から取り出すとすぐにエチレン生成を始める。このエチレン生成能力は種子発育の初期には高く, 成熟してくると減少した。この様なエチレン生成を示すのは種子組織の内で種皮のみで, 胚や胚乳ではエチレン生成はほとんど認められなかった。種子内のガス組成を調べたところ, O2が2.7%, CO2が19.5%, N2が77.9%だった。低濃度のO2はACCからエチレンへの転換を抑えることが知られているが, 高濃度のCO2ばかりでなく, 低濃度のO2によってもACC含量の増加が抑えられた。核から取りだした種子のACC合成酵素とACC酸化酵素の活性を調べたところ, いずれも活性は経時的に減少した。従って, モモの種子は核内では高CO2と低O2によってACC合成の直前かそれ以前の生合成過程が一時的にブロックされて, エチレン生成が抑制されていると思われた。核内でのエチレン生成の抑制と核から離脱後の著しいエチレン生成とモモの核割れ現象や果実の発育, 成熟との関係を考察した。
  • 姜 成求, 本杉 日野, 米森 敬三, 杉浦 明
    1998 年 67 巻 2 号 p. 153-160
    発行日: 1998/03/15
    公開日: 2008/01/31
    ジャーナル フリー
    異なる栽培地域のカキ'平核無'および秋季のGA (100ppm)の葉面散布処理により休眠打破を遅延させた'平核無'と'富有'を用いて耐凍性における休眠覚醒と高温(25℃)および低温(4℃)環境との関係を検討した.また, 鉢植えの4年生'平核無'についても同様の温度処理実験を行った.耐凍性の測定には熱分析法を用いた.'平核無'の休眠覚醒時期は, 山形では11月下旬で, 冬季の平均気温が2∿3℃高い京都, 高知では12月下旬であった.同じ時期の'平核無'の芽の耐凍性は山形で最も強く, 次に京都, 高知の順であった.秋季のGAの葉面散布処理により'平核無'と'富有'の休眠覚醒は各々12日と8日遅れた.これらの休眠状態が異なるカキに与えた低温および高温処理の影響は休眠状態によって異なり, 休眠の深い時期には高温, 低温ともにほとんど影響がなかった.これに対して, 休眠が醒めた時期の高温処理では芽の耐凍性が減少し, 低温処理では, 芽の耐凍性がやや増加した.温度処理の効果は温度処理期間に比例し, 4週間の高温または低温処理で耐凍性は各々最大4℃の減少と1.5℃の増加が得られた.鉢植えのカキにおける高温および低温処理でも同様に, 休眠覚醒後の処理のみに耐凍性の増減の効果が現れた.以上の結果から, カキにおける冬季の温度環境は耐凍性の維持にとって重要であり, 特に休眠覚醒後の高温は耐凍性の維持を困難にすると考えられた.
  • 黒田 治之, 匂坂 勝之助
    1998 年 67 巻 2 号 p. 161-165
    発行日: 1998/03/15
    公開日: 2008/01/31
    ジャーナル フリー
    植物の凍結障害の機構を明らかにするために, 凍結障害に伴っておこる過酸化物除去系の崩壊の要因を過酸化水素(H2O2)との関係において検討した.致死温度の-20℃まで凍結したリンゴ花芽を18℃で融解すると, 2時間後に中心花の部分に褐変が現れ, 4時間後には側花まで褐変が進行した。このような凍害症状を示す花芽において, H2O2は融解後30分以内に急激な増加を示した.その後H2O2は徐々に減少したが, その含量は高い水準で推移した.H2O2の蓄積に伴って, グルコース-6-リン酸(G6P)と還元型グルタチオン(GSH)は激減し, グルコース-6-リン酸脱水素酵素(G6PDH)とアスコルビン酸ペルオキシダーゼ(AsAPOD)は失活した.一方, 凍結過程においてH2O2はほとんど変化がみられなかった.しかし, GSHとG6Pは急激に減少し, またGSHの減少は酸化型グルタチオン(GSSG)の定量的増加を伴ったことから, 凍結中にH2O2が発生していることが示唆された.このような結果から, 凍結障害に伴っておこる過酸化物除去系の崩壊は凍結融解時に発生するH2O2の作用によること, さらに凍結障害には凍結融解時におけるH2O2の発生に始まって, 過酸化物除去系の崩壊, H2O2の蓄積と続く一連の過程が関係していることが考えられる.
  • 水谷 房雄, ラバニー ゴラム A. B. M., 秋好 広明
    1998 年 67 巻 2 号 p. 166-169
    発行日: 1998/03/15
    公開日: 2008/01/31
    ジャーナル フリー
    トロポロン, ヒノキチオール, プルプロガリン, コルヒチンが核から取り出された若いモモ種子のエチレン生成とACC含量に及ぼす効果を調査した.これらの化合物の水溶液または懸濁液を処理するとエチレン生成とACC含量の増加が抑制された.250ppmのトロポロンとヒノキチオール処理では95%エチレン生成が抑制された.プルプロガリンとコルヒチンはトロポロンとヒノキチオールに比べて抑制効果が低かった.トロポロンとヒノキチオールは室温でも気化するので, これらの気体がエチレン生成に及ぼす効果についても調査した.濃度が高いほどエチレン生成抑制効果も大きくなった.モモ種子を気体のヒノキチオール中から空気中に戻したところ, ヒノキチオールの濃度が低い場合にはエチレン生成の抑制が解除されたが, 濃度が高い場合にはエチレン生成の回復は見られなかった.
  • / 金山 喜則, 山木 昭平, Shohei Yamaki
    1998 年 67 巻 2 号 p. 170-175
    発行日: 1998/03/15
    公開日: 2008/01/31
    ジャーナル フリー
    メロン果実(Cucumis melo L.'プリンス')への糖の吸収機構を明らかにするために, 果肉組織への糖の透過特性の生長に伴う変動およびABAやIAAの透過機構に対する影響について検討した.糖透過のキネティックス解析では, 幼果(受粉後14日)と未熟果(28日目)からの組織へのグルコースとフルクトース, および幼果からの組織へのスクロースの吸収はbiphasic曲線となり担体輸送と単純拡散論送の存在を示した.それ故, 幼果においてはグルコース, フルクトース, スクロースに対して, 未熟果においてはグルコース, フルクトースに対して担体輸送が存在した, しかしながら成熟果(42日目)では担体輸送は検知できなかった.そして, 幼果および未熟果において, 担体輸送による吸収は低糖濃度でより効率的であった.この担体輸送のKm値は糖の種類および果実の生長段階にかかわらず6-14mMの範囲で大きな変化はなかった.ABA(10-5M)はグルコース, フルクトース, スクロースに対する単純拡散輸送を促進することによって, 果実組織への糖の吸収を促進した.一方, IAA (10-5M)は上記3糖に対する担体輸送と, グルコース, フルクトースに対する単純拡散輸送を促進することによって, 果肉組織への糖の吸収を促進した.糖の担体輸送および単純拡散輸送の生長に伴う変化, そしてそれらに対するABAやIAAの促進効果は, メロン果実の生長や肥大と密接な関係をもつものと思われる.
  • 大井 美知男, 露木 至, 吉田 裕一
    1998 年 67 巻 2 号 p. 176-179
    発行日: 1998/03/15
    公開日: 2008/01/31
    ジャーナル フリー
    イチゴの花芽発育に伴う, クラウン内のペクチン質多糖類の局在と変化を明らかにするため, 未分化および雌ずいの初生期のクラウン組織を顕微鏡で観察した.クラウン組織は1%ペクチナーゼ処理を行い, 未処理の組織と比較した.いずれの発育段階にあっても, 細胞内に多くの顆粒が観察された.未分化のクラウン組織では, ペクチナーゼ処理を行った場合でも, 未処理と同様に過ヨウ素酸-Schiff反応により, 細胞内の顆粒は染色された.一方, 雌ずい初生期のクラウン組織では, 未処理の場合に染色された顆粒が, ペクチナーゼ処理によって染色されなくなった.これらの結果から, 雌ずい初生期のクラウン組織の細胞内にみられた顆粒は, ペクチン質多糖類を含む高分子糖類から構成されていることが明らかとなった.また, 花芽発育に伴うクラウン組織でのペクチン質多糖類の増加は, 細胞内に顆粒として蓄積されるための現象であることが明らかとなった.花芽発育に伴うクラウン内のウロン酸の量的変化を調査したところ, 未分化から雌ずい初生期までの間を通じて, ウロン酸量はほとんど変化しなかった.これらの結果から, 花芽発育に伴ってクラウン組織の細胞内に顆粒状に蓄積されるペクチン質多糖類は, 恒常的に存在するウロン酸様物質から合成されるものと推察された.
  • 松原 陽一, 原田 隆
    1998 年 67 巻 2 号 p. 180-184
    発行日: 1998/03/15
    公開日: 2008/01/31
    ジャーナル フリー
    野菜栽培へのarbuscular菌根菌(AM菌)の利用を目的として, 感染率の高い接種技術を確立するため, アスパラガス(Asparagus officinalis L. var. altilis), ネギ(Allium fisturosum L.)およびハクサイ(Brassica campestris L.)の実生の根におけるペクチン質とAM菌感染との関連について調べた.根組織中のペクチン質含量は, AM菌の感染が困難であるアスパラガス貯蔵根, アスパラガスおよびネギ根端部, ハクサイ第2次側根および主根で比較的多く, これに対して, 感染が容易であるアスパラガス第1次吸収根, ネギ第1次側根および主根では少ないことがわかった.一方, ルテニウムレッド染色法によりペクチン質の局在を調べたところ, アスパラガス貯蔵根皮層部, ハクサイ第2次側根皮層部およびアスパラガスの根端部では反応が強く現れ, アスパラガス第1次吸収根, ネギ主根の皮層部では比較的弱かった.根組織の中層および1次細胞壁が厚い組織では, ルテニウムレッド反応が強く現れた.アスパラガス貯蔵根ならびにハクサイ側根の組織では, 中層が厚くペクチン質が多く存在しており, 感染が困難であったが, 菌(Gigaspora margarita)接種前にペクチナーゼで処理すると, 感染が認められるようになった.このように, 宿主根組織中のペクチン質とAM菌感染との間には密接な関連のあることが明らかになった.
  • 杉山 慶太, 菅野 紹雄, 森下 昌三
    1998 年 67 巻 2 号 p. 185-189
    発行日: 1998/03/15
    公開日: 2008/01/31
    ジャーナル フリー
    多雌花性のスイカを幼苗期に選抜するために、STS(チオ硫酸銀)を利用した簡易な検定法を検討した.1) 子葉展開期、本葉1枚展開期に3∿6mMのSTSを葉面散布(約2ml/株)することにより、第1雌花着生節位が無処理区よりも低下した.子葉展開期での処理がより効果が高く、無処理区に比べ平均約2節低下し、その結果第1雌花着生節位の低い系統では4節位から雌花が着生した。雌花着生数の多い品種ほどSTS処理によって第1雌花着生節位が下がる傾向が認められた。2) 雌花着生数の多い品種と少ない品種のF2集団においても、STS処理後の第1雌花着生節位の低い個体ほど雌花着生数の多い傾向が認められた。STS処理されたF2集団から第1雌花着生節位の低い個体と高い個体を選抜して、それらのF3世代における雌花着生数を調査したところ、第1雌花着生節位の低い個体の後代は高い個体の後代よりも雌花着生数が多くなり、第1雌花着生節位による選抜効果が認められた。以上の結果から、子葉期にSTSを処理することによって、定植適期(本葉5∿6枚)までに多雌花性個体を選抜することが可能であった.また、本手法により、従来定植後に判断していた多雌花性個体の選抜が育苗段階で可能となり、育種効率の向上に大きく寄与すると考えられた.
  • 金地 通生, 山田 潤子, 稲垣 昇, 前川 進
    1998 年 67 巻 2 号 p. 190-197
    発行日: 1998/03/15
    公開日: 2008/01/31
    ジャーナル フリー
    ヒマワリ葉の光合成に及ぼす水ストレスの影響を明らかにするため, ポットへの灌水を停止した後の葉の相対含水量(RWC)の低下に伴った光合成速度, およびその時のデンプンとショ糖含量を調査し, 光合成の非気孔的律速による減少と同化産物のそれぞれの葉内炭水化物への分配の変化との関連を検討した.葉片の最大光合成速度(Pmax)は気相型酸素電極法により光飽和およびCO2飽和(10 kPa)下で測定することで, 気孔閉鎖による葉内へのCO2の拡散不足を克服した葉肉細胞の最大CO2固定能力として評価した.Pmaxに達するのに必要な前照射時間は, 水ストレスを受けていない葉での2分と比べて葉の脱水に伴って(RWCが約60%) 8分と長くなり, さらにPmaxおよびみかけの量子収率(光強度-光合成反応曲線の初期勾配)が低下したことにより, CO2固定に関与する酵素の光活性化が水ストレスによって抑制されることが示唆された.50μMのアブシジン酸を投与して気孔が閉孔した葉のPmaxは, 測定時CO2濃度を10 kPaまで上昇させることによりCO2が葉内に十分に拡散し, 水ストレスを受けていない葉(RWCが85%以上)に匹敵するまで増加したが, 水ストレスを受けた葉(RWCが65%以下)のPmaxは完全に回復しなかった.また, RWCの低下に伴って, Pmax測定時の同化産物はデンプンの分配が減少し, ショ糖の分配が増加した.すなわち, ヒマワリ葉の脱水が著しくなるのに伴った光合成の低下は, 気孔閉鎖への起因から非気孔的な律速への起因に徐々に変化し, それには同化産物のデンプンおよびショ糖への分配パターンの変化に関与したフィードバック阻害が示唆された.
  • 小野崎 隆, 池田 広, 山口 隆
    1998 年 67 巻 2 号 p. 198-203
    発行日: 1998/03/15
    公開日: 2008/01/31
    ジャーナル フリー
    カーネーション切り花に対するAIBの連続処理(実験1, 2), 前処理(実験3, 4)における硝酸カルシウム添加によるカーネーションの花もち延長効果について検討した.連続処理において, AIB 10 mM液に硝酸カルシウム2.5mMを添加すると, 対照区(蒸留水)および単独処理区(AIB 10 mM, 硝酸カルシウム2.5 mM)に比べ, 有意に花もちが延長した.実験1での花もち日数を比較すると, AIB 10 mM区では8.8日, 硝酸カルシウム2.5 mM区では8.6日なのに対し, 両者を併用すると14.1日と, AIB 20 mM区の14.0日と同等の花もちを示した.実験2でも, 同様な結果が得られた.従って, AIB連続処理液への硝酸カルシウムの添加でAIBの使用濃度を半減できることが明らかになった.前処理については, AIB 60 mM区およびAIB 60 mMに硝酸カルシウムを添加したすべての区で, 対照区に比べ有意に花もちが延長した.さらに, AIB 60 mMの前処理剤に硝酸カルシウム10 mMを添加すると, 花もち日数が単独処理区(AIB 60 mM)に比べ, 21時間前処理(実験3)では20%, 24時間前処理(実験4)では14%延長する傾向がみられたが, この単独処理区(AIB 60 mM)に対する花もち延長効果は有意でなかった.この作用の機作については, 硝酸カルシウム添加により生じたCa2+により, カーネーション切り花へのAIB吸収が促進されたためと推定される.
  • 徐 忠傳, 生駒 吉識, 矢野 昌充, 小川 一紀, 兵藤 宏
    1998 年 67 巻 2 号 p. 204-209
    発行日: 1998/03/15
    公開日: 2008/01/31
    ジャーナル フリー
    中国系キウイフルーツ特に'紅心'と'魁蜜'にはエチレン生成に大きい品種間差があった.これらの差異は外生エチレンに対する品種の感受性と反応性に由来した.エチレン生成を誘導する能力は'紅心'より'魁蜜'が大きかった.'紅心'と比べると, エチレン生成量の高い'魁蜜'はACC含量も高かった.両品種間でACC酸化酵素遺伝子の発現レベルには大きい差が認められなかったのに対して, ACC合成酵素遺伝子の発現は'魁蜜'が'紅心'より著しく大きかった.エチレン生成量がエチレン処理後96時間でピークになった時点で, ACC合成酵素遺伝子の転写レベルが一番高く, ピーク前後で転写レベルが弱くなった.一方, ACC酸化酵素遺伝子の転写はエチレン処理終了直後から検出され, その後高い転写レベルを維持した.これらの結果より, エチレン生成の品種間差に関与する酵素はACC酸化酵素ではなく, 主にACC合成酵素であると考えた.
  • 浜本 浩, 宍戸 良洋, 古谷 茂貴, 安場 健一郎
    1998 年 67 巻 2 号 p. 210-212
    発行日: 1998/03/15
    公開日: 2008/01/31
    ジャーナル フリー
    トマトの果柄に2, 3, 5-トリヨード安息香酸(TIBA)を含むラノリンペーストを塗布し, 振動受粉で着果させて, 幼果の生育とIAAレベルを調査した.TIBA処理によって幼果内のIAAレベルは高くなった.果実の重量増加はTIBA処理に影響されなかったが, 空洞の大きさと尻腐れ果の発生がTIBA処理で増加した.また, 種子の発育はTIBA処理によって抑制された.
  • ラバニー ゴラム A. B. M., 水谷 房雄
    1998 年 67 巻 2 号 p. 213-215
    発行日: 1998/03/15
    公開日: 2008/01/31
    ジャーナル フリー
    傷害を与えたカボチャの果肉組織を用いて, トロポロンとヒノキチオールがエチレン生成, ACC含量, 試験管内でのACC合成酵素およびACC酸化酵素活性に及ぼす影響について実験をした.1 ppmから500 ppmの濃度で処理したところ, トロポロンでは対照区に比べてエチレン生成が33%∿98%抑制され, ACC含量が48%∿83%減少した.一方, ヒノキチオールではエチレン生成で17%∿97%の抑制と, ACC含量で34%∿83%の減少が見られた.両方の化学物質ともACC合成酵素とACC酸化酵素の両者の活性を阻害することによってエチレン生成を抑制していることが分かった.
  • 太田 勝巳, 鶴永 建治, 細木 高志
    1998 年 67 巻 2 号 p. 216-218
    発行日: 1998/03/15
    公開日: 2008/01/31
    ジャーナル フリー
    定植後から収穫終了時まで園試処方標準濃度液で水耕栽培したミニトマト'サンチェリーエキストラ'において, 夜間(午前1時∿午前5時)光照射した場合, 裂果の発生が制御可能かどうか検討した.裂果発生率は対照区では約10%であった.強光照射区(81.1μmol・s-1・m-2 PAR)においては4%となったが, 弱光照射区(8.1μmol・s-1・m-2 PAR)においては約8.5%であり, 対照区とほぼ同程度であった.強光照射区では午前4時における気孔の拡散抵抗は低下した.果柄の水分移動速度は強光照射処理時間中に低下し負の値を示したが, 一方, 葉柄の水分移動速度は正の値をとり, 水分が流入していることを示した.午前4時における強光照射区の葉の水ポテンシャルは対照区に比べ低下した.以上の結果より, 夜間に強光を照射した場合, 葉からの蒸散が生じることによって植物体内から水分が減少し, 果実への水分流入が抑制された結果, 裂果の発生が低減したものと考えられる.
  • 文室 政彦
    1998 年 67 巻 2 号 p. 219-227
    発行日: 1998/03/15
    公開日: 2008/01/31
    ジャーナル フリー
    密植栽培の6∿9年生'西村早生'を供試して, 新梢伸長初期の主幹部の環状はく皮が樹の生長および根の生理機能に及ぼす影響を検討した.5月初旬(雌花満開22日前)に, 地上より10cm上の主幹部に1 cm幅で環状はく皮処理を行ったところ, 新梢生長および幹の肥大が顕著に抑制され, 着葉数が減少した.処理翌年も新梢生長が抑制された.収量および果実品質は処理当年および翌年とも処理による影響が少なかった.4月下旬(雌花満開34日前)または5月初旬(雌花満開23日前)に環状はく皮処理を行ったところ, 処理時期が早いほど新梢生長および幹の肥大が抑制された.また, 処理により着葉数は減少し, 個葉の生長が抑制された.処理により細根の酸素吸収速度は低下し, 木部樹液中の硝酸態窒素およびカリウム濃度が低下し, 新梢内窒素, カリウムおよびマグネシウム含有率は減少した.枝および葉の水ポテンシャルは処理による影響が少なかった.以上の結果, 新梢伸長初期の主幹部の環状はく皮はカキのわい化密植栽培において, わい化の手段として有効であることが実証された.樹の生長抑制の原因としては, 新梢ならびに個葉の生長が抑制され, 葉量が減少した結果, 葉の乾物生産量が減少したこと, 根の生理機能が低下したことが関与するものと考えられた.
  • 西山 学, 大川 亘, 金浜 耕基
    1998 年 67 巻 2 号 p. 228-235
    発行日: 1998/03/15
    公開日: 2008/01/31
    ジャーナル フリー
    四季成り性品種'サマーベリー'の11月に鉢上げした苗(休眠状態の苗)を供試して, 16週間にわたる温度(昼温/夜温 : 20/15℃, 25/20℃, 30/25℃)と日長(8時間日長, 24時間日長)を組み合わせた処理が栄養生長と生殖生長に及ぼす影響を調べた.1. 30/25℃の場合, 8時間日長では開花花房が認められなくなった.24時間日長では処理開始後10週目まで開花花房数が著しく多くなって, その後は成り疲れのため減少した.24時間日長では, 腋芽が葉を分化しないで発達した葉無着生腋花房の発生率も高くなった.この結果は, 6月に鉢上げした苗(非休眠状態の苗)に温度・日長処理を行った場合と同じであった.2. 25/20℃と20/15℃の場合, 8時間日長より24時間日長の方が開花花房数が多かった.日長の影響は, 25/20℃より20/15℃の方が小さかった.3. 葉柄長は, 20/15℃の場合, 8時間日長では著しく短かったが, 24時間日長では著しく長かった.25/20℃と30/25℃の場合, 日長の影響は小さかった.
  • 水口 茂, 大川 勝徳, 大城 智弘
    1998 年 67 巻 2 号 p. 236-241
    発行日: 1998/03/15
    公開日: 2008/01/31
    ジャーナル フリー
    本実験は, ササユリの再生した子球を用いて植物生長調節物質と維管束組織の発達との関係を明らかにする目的で行った.培養8週間後の再生子球のりん片では, 1本の大維管束と2本の小維管束が認められた.維管束の配列ではりん片と短縮茎は並立維管束, 根は放射維管束であった.りん片の大維管束は2節下位のりん片の維管束と連絡し, 小維管束は1節下位のりん片の維管束と連絡していることが明らかになった.また, 根原基は短縮茎内部に形成された輪状の組織から発生していた.植物生長調節物質無添加区で培養した再生子球では維管束の走向に規則性が認められたが, NAA 0.01mg・liter-1とBA 2.0mg・liter-1の添加区では規則性が認められなかった.また, NAA 0.01mg・liter-1とBA 2.0mg・liter-1を添加した培地で培養した場合, 子球の中央部に多くの維管束が認められた.以上の結果から, 高濃度のBAは子球の維管束の配列を不規則にすることが明らかとなった.
  • 大川 勝徳, 北嶋 純也
    1998 年 67 巻 2 号 p. 242-248
    発行日: 1998/03/15
    公開日: 2008/01/31
    ジャーナル フリー
    クロユリ(Fritillaria camtschatcensis Ker-Gawl.)球根を栽培して, 出芽, 着葉, 開花および形成された新球などの形態的特徴を調査するとともに, その増殖を目的として球根に多数着生している小球状りん片を用いて, in vitro培養による子球形成に及ぼす温度, 光および植物ホルモンなどの影響を検討した.1. 球根を1995年11月上旬にポットに植え付け, ガラス室で栽培した結果, 葉は5∿6枚輪生し, 花は1本の茎から1∿2個で斜め下向きに咲いた.花蓋は広鐘形で平開しなかった.1996年7月下旬に球根を圃場から掘り上げ, その状態を調査した結果, 母球とそれに付着していた小球状りん片の大部分は腐敗していた.しかし2個の新球(約5g, 生体重)と子球を形成している6∿7個の小球状りん片が残存していた.2. 小球状りん片に子球を形成させるためin vitro培養した結果, 暗条件下で20℃が良い条件であった.3. 小球状りん片の子球形成率を高めるためin vitro培養した結果, NAA 0.1mg・liter-1とEB 0.1 mg・liter-1との併用が良好な条件であった.
  • 林 勇
    1998 年 67 巻 2 号 p. 249-260
    発行日: 1998/03/15
    公開日: 2008/01/31
    ジャーナル フリー
    有機物の種類と投入量が土壌理化学性と温室バラの収量, 品質におよぼす影響を, 72cm×90cm, 深さ30cmの木箱栽培方式で4年間にわたって調査した.黒ボク土壌に牛ふん堆肥とかんなくずを容積で1対1に混合した混合堆肥ならびにバーク堆肥を容積比でそれぞれ70, 50, 30%混入した区およびピートモスを50%混入した区の7区を設け, 'ブライダルピンク'を供試し, 有機質肥料主体と化成肥料利用の2つの施肥区を設けた.1年目の切り花本数, 切り花茎長には有意差がなかったが, 2年目には混合堆肥の70%, 50%区で切り花茎長が有意に劣った.混合堆肥, バーク堆肥の50%以上の大量投入区では床土容積の減少が顕著で, 満2年経過後の植え替え時にバーク堆肥で減少分を補った.混合堆肥, バーク堆肥の30%区とピートモス50%区は有機物補充をしなかった.3, 4年目の収量は有機物補充をしなかった区でやや少なかった.土壌中の無機成分濃度は牛ふん堆肥を50%含む混合堆肥の投入量の多い区ほど高く, 投入有機物中の無機成分が土壌養分濃度上昇の大きな要因となることが明らかであった.施肥法では1年目は有意差がなかったが, 2年目には化成肥料区の方が切り花本数が多かった.本栽培方式では, 通常のかん水時にもかなりの量の無機成分の溶脱が起こっており, また, 栽培途中および改植時の大量かん水による除塩も, 効率的に行えた.供試有機物について, 土壌の通気性を中心に土壌物理性改善の持続効果を継続調査した結果, ピートモスがもっともすぐれており, バーク堆肥がこれについだ.混合堆肥区の牛ふん堆肥は腐熟, 分解が早く, 大量に投入した区ほど低水分張力条件下での気相率の減少が目立ち, 耐久性に問題があることが判明した.
  • 馬 旭偉, 下川 敬之
    1998 年 67 巻 2 号 p. 261-269
    発行日: 1998/03/15
    公開日: 2008/01/31
    ジャーナル フリー
    本研究では, エチレン処理したバナナ果実(Musa sapientum L.)の果皮より調製した粗酵素液中に, クロロフィルaを分解する酵素が存在することを明らかにした.また, この酵素とその反応について次のことを明らかにした.1) H2O2と2, 4-DCPが必要なことからペルオキシダーゼであること, 2) Tiron, Mn2+, hydroquinone, L-ascorbate sodium, n-propyl gallate, salicylhydroxamic acid, KCN, NaN3で阻害されるため, この酵素反応にO-2とラジカルが関与していること, 3) 2, 2'-bipyridyl, Tironにより阻害されることは, この酵素反応にFe2+あるいはFe3+が関与していること, 4) NaN3に対する阻害程度の違いからクロロフィル分解ペルオキシダーゼはグアヤコールペルオキシダーゼとは別のものであること, 5) pHのピークが5.2, 5.8と6.4にあることから, アイソザイムが存在すること, 6) タンパク質量に対する反応量は直線的であること, 7)基質のKm値は16.5μMであること, 8) H2O2のKm値が20.44μMで, この値は既知のペルオキシダーゼに比べ低い値である(高い親和性をもつ)こと, 9) これらの値と性質は, この酵素が生体内で作用している可能性があること.さらに, 反応液の可視部でのスペクトルの変化, 特に, 経時的な波長のシフトとソーレーバンドの消失と差スペクトルの結果から, クロロフィルaは開環したクロロフィル代謝産物(Ex 350nm, Em 465nm)に分解するものと考えられる.
  • 関本 均, 松浦 克枝, 吉野 健
    1998 年 67 巻 2 号 p. 270-272
    発行日: 1998/03/15
    公開日: 2008/01/31
    ジャーナル フリー
    一般にジベレリン生合成阻害剤処理によって植物葉は濃緑化することが知られている.しかし, 濃緑化の持続性や処理中断後の葉色の回復については明らかになっていない.そこでキュウリを用い, 無処理区, ジベレリン生合成阻害剤処理区および処理中断区の葉色と葉面積の縮小ならびに無機成分(N, MgおよびFe)含有率の関係について葉位別に比較検討した.ウニコナゾールPは葉の濃緑化と葉面積の縮小をもたらすが, 葉面積の縮小がすべての葉位で起こっても, 上位葉では濃緑化が認めらず, 処理以前に展開し, 葉面積の縮小が起こらなかった葉位でも濃緑化した.また葉面積の縮小と濃緑化が起こった葉位でも処理中断によって濃緑化は解除された.ウニコナゾールPによる葉の濃緑化と葉面積の縮小は必ずしも対応しないので, 葉の濃緑化は器官の矮小化に付随する現象ではないと思われた.一方, 全窒素含有率の増減は葉色の変化と対応したが, 全Mgおよび全Fe含有率は対応しなかった.ウニコナゾールPによって植物の内生サイトカイニン含量が高くなるという報告があることから, ウニコナゾールPによるキュウリ葉の濃緑化は, ジベレリン生合成阻害作用による内生ジベレリンレベルの低下と矮小化に起因するのではなく, 内生サイトカイニンレベルの増加とそれと関連する葉の窒素栄養状態の変化に基づくものであると推察された.
feedback
Top