抄録
異なる栽培地域のカキ'平核無'および秋季のGA (100ppm)の葉面散布処理により休眠打破を遅延させた'平核無'と'富有'を用いて耐凍性における休眠覚醒と高温(25℃)および低温(4℃)環境との関係を検討した.また, 鉢植えの4年生'平核無'についても同様の温度処理実験を行った.耐凍性の測定には熱分析法を用いた.'平核無'の休眠覚醒時期は, 山形では11月下旬で, 冬季の平均気温が2∿3℃高い京都, 高知では12月下旬であった.同じ時期の'平核無'の芽の耐凍性は山形で最も強く, 次に京都, 高知の順であった.秋季のGAの葉面散布処理により'平核無'と'富有'の休眠覚醒は各々12日と8日遅れた.これらの休眠状態が異なるカキに与えた低温および高温処理の影響は休眠状態によって異なり, 休眠の深い時期には高温, 低温ともにほとんど影響がなかった.これに対して, 休眠が醒めた時期の高温処理では芽の耐凍性が減少し, 低温処理では, 芽の耐凍性がやや増加した.温度処理の効果は温度処理期間に比例し, 4週間の高温または低温処理で耐凍性は各々最大4℃の減少と1.5℃の増加が得られた.鉢植えのカキにおける高温および低温処理でも同様に, 休眠覚醒後の処理のみに耐凍性の増減の効果が現れた.以上の結果から, カキにおける冬季の温度環境は耐凍性の維持にとって重要であり, 特に休眠覚醒後の高温は耐凍性の維持を困難にすると考えられた.