園芸学会雑誌
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イチゴの花芽発育に伴うクラウン内ペクチン質多糖類の消長と局在
大井 美知男露木 至吉田 裕一
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1998 年 67 巻 2 号 p. 176-179

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抄録

イチゴの花芽発育に伴う, クラウン内のペクチン質多糖類の局在と変化を明らかにするため, 未分化および雌ずいの初生期のクラウン組織を顕微鏡で観察した.クラウン組織は1%ペクチナーゼ処理を行い, 未処理の組織と比較した.いずれの発育段階にあっても, 細胞内に多くの顆粒が観察された.未分化のクラウン組織では, ペクチナーゼ処理を行った場合でも, 未処理と同様に過ヨウ素酸-Schiff反応により, 細胞内の顆粒は染色された.一方, 雌ずい初生期のクラウン組織では, 未処理の場合に染色された顆粒が, ペクチナーゼ処理によって染色されなくなった.これらの結果から, 雌ずい初生期のクラウン組織の細胞内にみられた顆粒は, ペクチン質多糖類を含む高分子糖類から構成されていることが明らかとなった.また, 花芽発育に伴うクラウン組織でのペクチン質多糖類の増加は, 細胞内に顆粒として蓄積されるための現象であることが明らかとなった.花芽発育に伴うクラウン内のウロン酸の量的変化を調査したところ, 未分化から雌ずい初生期までの間を通じて, ウロン酸量はほとんど変化しなかった.これらの結果から, 花芽発育に伴ってクラウン組織の細胞内に顆粒状に蓄積されるペクチン質多糖類は, 恒常的に存在するウロン酸様物質から合成されるものと推察された.

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