抄録
カキ'前川次郎'の隔年結果性を生態的, 樹体栄養的特徴から解明するために, 解体前10年間の生態的特徴と6年間の栄養成分含有率について調査し, さらに, 隔年結果樹と対照樹を解体し, その器官別乾物重と栄養成分蓄積量を調査した.1. 隔年結果樹における正常花の着生は, 年次変動が大きかったが, 落果率は対照樹と大きな差はなかった.豊作, 不作年とも対照樹に比較し, 隔年結果樹の平均果重はやや小さく, 糖度も低かった.2. 隔年結果樹は樹全体の乾物蓄積量が少なく, 特に地上部の減少が顕著であった.3. 隔年結果樹は, 結実前年の葉中窒素, リンが対照樹より低く, 結実後の葉中窒素とリン, 休眠期の1年生枝のリンとカリウムが低かった.器官別無機成分含有率では, 隔年結果樹のリンは1年生枝と2年生枝を除く, 全ての器官で対照樹より低く, カリウムは地上部で低かった.4. 隔年結果樹では1年生休眠枝中のデンプンが豊作年で極めて低かった.対照樹では収量が多いにも関わらず, デンプンは高かった.器官別デンプンにおいて, いずれの器官も地上部より地下部で高かった.隔年結果樹のデンプンは前年の結実過多の影響を受け, いずれの器官でも対照樹より低かった.5. 以上のことから, '前川次郎'の隔年結果は, 着果過多が樹体のデンプンと三大無機要素を減少させ, そのことが翌年の着花数の減少を誘引し, 不作年が隔年に生じたものと考えられる.